用語

普請は道楽?

明治期に「建築」という言葉が生まれる以前、わが国では建物をつくることを何と表現していたのでしょう。

調べたところによると、「普請」ということばがそれに当てはまるようです。最近では「安普請(安く建てた家)」「普請道楽(家にお金をかけまくる)」という使い方程度にしか残っていない単語なので、何となくイメージが良くない気もします。しかし普請とは普く(あまねく)請う(こう)ことであり、まさに多くの人に手伝ってもらう、という言葉です。元々は仏教用語だったようですが、昔は一つの建物を作り上げるまでにたくさんの人の力が必要だったので、その代表的な単語である「普請」を家づくりを指す言葉として使ったのでしょう。ちなみに「普請」と同じような意味の単語に「勧進」があります。寺社をつくる際に寄付を呼びかける文章を「勧進帳」と言い、歌舞伎の演目にもなっているのでご存知の方も多いと思います。

さて、みんなに手伝ってもらうことをあらわす「普請」。現代ではそういうイメージをもって家作りに臨むお施主さまは殆んどいないと思います。ハウスメーカーとの家作りでは主な相談先は営業マンということになりますし、建売住宅を購入する場合は作り手との接点自体が存在しません。

しかし現代でも、一つの建物が出来上がるまでに多くの人の力が必要となること自体は変わりありません。建設会社が工事を請け負う場合でも実際に作業を行うのはその建設会社の取引先の大工・金物・サッシ・家具・電気・ガス・水道・空調といった専門の職人さんたちです。現場では様々な職人さんたちに設計のイメージを伝え、逆に専門的な意見を聞きながら、イメージどおりでしかも用に耐えるのものを生み出していきます。我々が設計図に書くことはいわば机上の空論なので、実際施工する側の視点で考え直すプロセスがとても重要です。

「こんな感じにしたいんやけど、どやろ。難しい?」
「それもできんことないけど、こんな感じやったらあきまへんか?」
「おお、それええなあ。それで頼みますわ」

そんなやりとりはまさに「普請」といえるものです。

普請を重ねた建築は、一人の設計者ではなく現場全体の意思のカタマリとして立ち上がってきます。逆にコミュニケーションが機能不全を起こした現場は、イメージどうりには出来上がりません。現代における普請、現場監理はとても重要です。