借家の家|賃貸向け一戸建て住宅の最小限リノベーション Shakuya House

最近では空家問題がマスコミで大きく取り沙汰され、世の中にたくさんの住宅が余っている現状をご存知の方も増えてきました。新たな住まいを検討する上で、新築と、中古物件を安く購入してリノベーションする2つの方法を並行して検討される方も少なくありません。一方で世の中の空家物件には、自己居住用でない借家物件も数多く存在します。老朽化や、周辺に建った新しい物件との競争に負けて借り手がつかなくなり、オーナーも管理会社も大きな費用をかけて建て替える以外道がないと思い込んでいるため、何の改善措置も取られないまま放置された物件たち。しかしリノベーションの視点で見れば、昭和期の借家物件はしっかりと作られた建具や家具、アイアンの格子、焼きムラのあるタイルなど、少し手を入れるだけでレトロな雰囲気のインテリアとして再び活躍できるポテンシャルを備えた大変魅力的な資源です。自己所有では気になる性能面も、借家ならある程度割り切ってデザインに注力することが出来ます。今回はお施主様が新たに賃貸用として購入した中古物件をリノベーション。最低限の性能更新を行うとともに、古い仕上げ材から残せる部分と交換する部分を慎重に仕分けし、新旧のバランスを取りながら色柄を加えて空間を引き締めました。

Shakuya House

In Japan, the problem of vacant houses caused by the declining population is becoming more serious, but the housing market is still based on a scrap-and-build system, and the distribution market for used houses is extremely limited. Recently, this issue has been widely discussed in the mass media, and an increasing number of people are considering two options for their new homes: new construction or renovation after purchasing an existing property.On the other hand, there are also a huge number of rented properties for small businesses in Japan. Many of these properties are left vacant after they become old and no one rents them.However, many of the houses built in the mid-Showa period (1960s-1970s) have the potential to be active again with just a little updating, using handmade doors, furniture, hardware, tiles, and other retro-inspired materials.This project is a renovation of an existing property newly purchased by the client for rental.We updated the performance of the facilities, carefully selected which parts of the old finishes to keep and which to replace, and added color and pattern to coordinate the old with the new.

エントランス。既存のアルミサッシを撤去して杉縁甲板貼引き戸を製作。鍵はディンプル錠に変更。FIX窓にはポストも併設。

借家ならではのゆっくりした時間が流れる住まい。

普段使いにはちょうど良い10.5帖のコンパクトなLDK。既存床の上に杉足場板貼り。

頑強なフレームとステンレストップはそのまま使用しながら換装したキッチン。扉はラワン積層合板に取替え、つまみはアンティークに変更。

玄関のホールを彩る柄物壁紙。玄関の床は既存のタイルの上にモルタル塗り。

玄関。階段は再利用しつつ、素材感にメリハリを与えるため、蹴上部分のみベニヤ貼り。

和室・LDKの建具は既存枠を利用しながら、障子のみガラス格子戸に変更。奥行きのある空間となった。グリーンの砂壁の奥に柄クロス。更に藍鼠色の壁面。

玄関からLDKをのぞく。

階段手摺は1x4材で極めてローコストに新設。

針葉樹合板の造作カウンターと洗面器だけのシンプルな洗面室。浴室はレトロな床タイルを尊重して再利用。壁面のみ防カビペイントで白く塗装。

概要 計画|2015 所在地|奈良市 用途|一戸建ての住宅 構造規模|木造2F 坪単価対象面積|17坪[56m2]

協働 設計監理・キッチン換装|山本嘉寛・三橋香織[yyaa] 施工|[ツジムラ建工] 撮影|山田圭司郎[YFT,]