見た目の前に
古民家再生・町家改修といえば、古い柱梁を露出にして、レトロな建具や家具調度に囲まれて、無垢材や土壁などナチュラルな素材を使って、縁側や庭もあったりして・・・など住み方のイメージがどんどん膨らみますが、少し立ち止まって、50〜100年前に建てられた家に本当に不安・不便を感じずに住めますか?という事を考える必要があります。住み方のイメージを膨らませることも大切ですが、それを実現させる上でどのようなハードルがあるか、知っておくことも重要です。
構造補強
【大正~戦前】の多くの木造住宅は石の上に柱を直接乗せただけの「石場建て」で建てられています。地面と建物の縁を切り、地震に対してしなやかに揺れる日本古来の考え方に価値を見出し、敢えて伝統工法による改修を行う方向性もありますが、今日それを行うためには大変な時間・労力・費用を要します。文化財指定を受けるようなお屋敷や寺社でなければ現代的な構造形式への改修が現実的であろうと考えています。すなわち、鉄筋コンクリート造基礎への置き換え、筋交いや合板による壁面・床面補強、金物による接合部補強です。また、屋根は10〜15cm程度の重い葺き土の上に更に重い瓦が載っているため、軽量瓦や鋼板葺きに変更するか、少なくとも葺き土を撤去して軽量化することも大変効果的です。【東京オリンピック~70年代】の木造住宅ではコンクリートの基礎の上に土台・柱が乗っています。ただ、基礎が適切に施工され不具合も生じていなければ、補強が不要な場合もあります。しかし鉄筋が入っていない無筋コンクリート基礎であったり、不同沈下などで大きな割れが生じてしまっている場合は補強が必要です。また、多くは布基礎(丄型の基礎)なので、床下の多くの部分は土が露出しています。構造面でも湿気対策の面でも、リノベーションの機会にベタ基礎(全面基礎)に変更する方が得策です。柱梁には、耐力壁の追加・床構面の強化・金物による緊結を行います。屋根は土葺きではない引掛け桟瓦葺きや、鋼板・化粧スレート葺きの軽量屋根であれば構造への負担は小さいですが、建材の劣化に伴って屋根を葺き替える場合は野地板を構造用合板に変更して水平構面を強化しま
設備の更新
【戦前】の古民家の設備がそのまま残っているケースは珍しく、昭和期に土間の炊事場をキッチンに、離れにあった浴室や便所を宅内にリフォームされている事がほとんどですが、そのリフォーム工事の際に増築して庭や縁側が無くなってしまっていたり、古い井戸を上から埋めていたり、と問題が生じてているケースが多いため、当初の建物の在り方に立ち戻って、適切な設備設計を行う必要があります。また、建物内外の設備配管・配線(給水・給湯・排水・電気・換気・空調・ガス)は全て敷設しなおす工事が基本となります。
廃棄物の処分
葺き土や土壁を撤去すると膨大な土の廃棄物を生じます。文化財の改修では土壁を練り直して再利用する場合もありますが、やはり大きな手間・時間・費用を要するため、一般住宅では廃材として処分することになります。土だからといってどこにでも捨てられる訳ではもちろんなく、産業廃棄物として取り扱われるため運搬・処分費が嵩みます。また、古家の多くには家具や家電がそのまま残されています。それらの処分も簡単ではありません。
残置物の撤去は、建物の解体業者に一緒に撤去してもらう方法が一番楽ですが、不用品の回収業者より割高になります。できればお施主様側で回収業者に依頼したり、直接地域の焼却場に持ち込む事でコストを圧縮するほうが得策です。
防水性の確保
古民家の多くは桟瓦葺きです。年代が古いお屋敷では丸瓦の場合もあります。古い瓦は耐久性・防水性に優れた材料ですが、台風や地震でずれたり漆喰にヒビが入ったまま放置するとそこから徐々に浸水が始まります。また、一部を銅板貼りとした屋根も多く見られます。酸性雨の影響で劣化したり穴が空いている場合もあります。屋根仕上材が劣化していると、雨が土葺、野地板、天井、と伝って漏水被害が発生します。最初は天井にシミが出来る程度ですが、長年漏水が続くと柱梁の腐朽や白蟻被害へつながります。建物側面も、塗り壁のヒビ割れや焼杉のめくれ、建具の枠の劣化やガラスの割れなど、簡単に室内に水が浸入出来る状態になっている場合が多く、劣化した箇所を補修し、防水性を高める必要があります。
外構においても道路より玄関の床面が低かったり、排水枡や排水管に泥が詰まって機能していないために雨水が流れ込みやすい状態になっている場合は、新たに排水溝を設けるなど水捌けを良くする対策が必要になります。
断熱性・気密性の向上
【戦前の古民家】には断熱という概念がありません。土壁は、調湿能力については大変優れていますが断熱性は期待できません。断熱性を同じ厚みで比較すればグラスウールの1/10以下です。床下も風が通り抜ける設計です。古い木製建具も経年変化で木材が痩せると隙間風がいくらでも入り、ガラスも薄い単板ガラスです。「夏暑くて冬寒い家こそ古民家の本質だ」というストイックな方でなければ、床・壁・天井・開口部の断熱性・気密性を高める工事が必要です。
【戦後旧耐震の古民家】では、年代を下るにつれて壁に断熱性が入っている割合が増えていきます。ただ止めつけが外れていたり漏水で劣化していたり用を成していない場合も多いので、断熱材は基本的に全て更新する方向となります。
断熱性・気密性を高めると結露の問題が生じます。そのため新築と同様、外壁裏に通気経路を設け、透湿防水シート・防湿気密シートによって結露を防ぐ設計となります。また、室内の空気を清浄に保つために24時間換気対応の換気扇または全熱交換器を設置します。
設備の更新
戦前の古民家の設備がそのまま残っているケースは珍しく、昭和期に土間の炊事場をキッチンに、離れにあった浴室や便所を宅内にリフォームされている事がほとんどですが、そのリフォーム工事の際に増築して庭や縁側が無くなってしまっていたり、古い井戸を上から埋めていたり、と問題が生じてているケースが多いため、当初の建物の在り方に立ち戻って、適切な設備設計を行う必要があります。また、建物内外の設備配管・配線(給水・給湯・排水・電気・換気・空調・ガス)は全て敷設しなおす工事が基本となります。
