戦前インダストリアル系長屋

昨年末に京町家まちづくりファンドの現地確認があり、現況や痕跡から、今回の建物にどういう意匠が適切かをご指導頂きました。当初は出格子や通り庇など、いわゆる京町家の体裁で設計していたのですが、一転、これはどうもそうじゃないぞ、という事になりました。

長屋形式でも一階は全て土間で、2階へ上がる階段は通常の1.5倍ぐらいの幅があります。清水焼のメッカという立地から、陶工のアトリエや清水焼の保管のために作られた建物の可能性が高く、無骨な板戸や小ぶりな窓など、どちらかというと産業系の木造建築に近い意匠がこの建物の特徴だという事です。

頂いたご意見を元に意匠を見直すと、なんだか戦前の木造校舎のような、独特なデザインになりました。上品な京町家とは異なる系譜で、おそらくほとんど残っていない手工業の匂いのする長屋です。ボロボロの廃屋に見えていた建物が、実はとても価値があるという事が分かってきました。