【保存版】マンションリノベーションの実測調査チェックリスト

投稿日: カテゴリー: '18奈良市M邸用語

奈良市よりマンションリノベーションのご相談を頂き、現地調査に行って来ました。南向きのベランダから若草山もよく見える見晴らしのよい部屋です。

 

マンションリノベーションの調査や設計もかなりの数を積み重ねてきて、ずいぶん効率的に行えるようになってきたように思います。今まで痛い目に遭った経験で(温かいお施主様みなさまのおかげで事なきを得ていますが)、後々問題になりそうなポイントを事前に確認できるようになりました。昔はひたすら室内の寸法を測ったものですが、最近は構造や設備についてより詳しく調べるようになりました。

 

マンションはある程度定型があるので、戸建てほど想定外の事態は起こりませんが、それでも構造・設備のことをきちんと調べておかないと、思わぬところに小梁があったり、配管があったり、プランニングした通りの空間にならない場合が出てきます。逆に言うと、しっかり詳細な調査を行っておくほど、何が出来て何が出来ないのかが分かり、それだけシビアに設計することが可能になります。極端に言えば他のリフォーム会社が出来ないと言っていたことも、出来るようになるケースがあるということです。せっかくなので、リアルタイムに調査を進めながら最近どういった視点でマンションを見ているかご紹介しようと思います。

 

1.ユニットバス天井裏

マンションリノベーションの調査の基本です。ユニットバスの天井には必ず点検口があるので、そこから天井裏を覗きます。給排水・換気の経路の状態を確認しつつ、天井面の打放しコンクリートの状態も見ています。

 

2.サッシ周り

アルミサッシは基本的に入れ替えできないので、その高さが室内の床高さの基準となります(ぴったりあわせる必要はありませんが、サッシとの際の収まりに工夫が必要になります)。また、アルミサッシ周辺の部材の寸法を測ることでコンクリートや断熱材の厚みもある程度想定できます。

 

3.ドア周り

ドア前後の高さ関係も重要ですが、玄関では現状の仕上材が何であるか、も要チェックです。石やタイル仕上の場合は、つぶしてやり替えようとした場合にガガガガ・・・と非常に大きな騒音が発生します。今までの事例でも苦情率100%です。管理組合の許可を得ている以上は強行できなくはないのでしょうが、ご近所さんと険悪になっては大変です。「更の家」はご近所さんの都合に合わせて工期を延ばしタイル張替えに成功しましたが、「閑かな家」ではつぶすことをあきらめてタイルの上にモルタルを重ね塗りしています。「着替える家」は石の上にプラスチックタイルを貼りました。「吹き流しの家」は諦めてタイルをそのまま残すことになりました。なかなかのトラブルポイントなので、工務店も慎重になる箇所です。

 

4.換気口の位置・大きさ。

コンクリートには新たに穴を空けられないので、空調・給気・換気扇の出入口は既存の換気口を利用することになります。特に空調の配管ルートはマンションの新築時にうまく設計されていない場合も多いので、どういう風に変更すれば配管を隠せるか、設計の初期段階から頭の片隅に置いておく必要があります。「着替える家」は配管をルーバーで隠蔽しました。「閑かな家」は壁にメンテナンス可能なパイプスペースをつくってその中を通しています。「吹き流しの家」は1つの穴に2台のエアコン配管を通す離れ業です。

 

5.換気ダクトの出口

ベランダや廊下側から、どの位置にどんな大きさの開口があるのか確認します。室内から見えない天井裏の配管経路もある程度判断できます。

 

6.分電盤

マンションでは住戸あたりの電気容量が決まっているので、特に古いマンションではエアコンの設置台数に制限を受ける場合があります。火元をIHに出来るかどうか、も管理規約と照らし合わせつつ調査します。「引き算の家」はマンション全体の容量に余裕があったのでIHに変更できました。

 

7.インターフォン

古く黄ばんだマンションのインターフォン。もちろん交換したいところですが、大きなマンションでは火災警報器も兼ねているので、交換するのは非常にハードルが高く、大変です(私たちの事務所でも今まで一度も成功していません)。止む無く再利用することになるのですが、結構大きくて出っ張りもあるので、目立たずしかし使いやすい位置に計画する必要があります。事前にサイズや品番など調べておくと便利です。

 

8.ガス給湯器

今不具合がなくとも一般的に約10年が交換の目安なので、製造年が古いものは不動産会社さんの「まだ使えます」をあてにせず交換するほうが得策です。また、ユニットバスの追い炊き対応のある/なしも調べておかないと、着工後に思わぬ追加費用が必要になる場合もあります。

 

9.竣工図

実地の調査はもちろんですが、何と言っても重要なのは新築時の竣工図面です。マンションでは管理人室などに竣工図面や工事図面を保管している場合がほとんどなので、不動産会社や管理人さんにお願いして必ず調査しています。構造図を見ることで、柱・梁・床の正確な厚みを調べることが出来ます。また設備図を見ることで、配管ルートや管の大きさも一目瞭然です。実際の施工と図面が整合していない場合もあるのですが、それはそれで、結構図面どおり作られてないマンションだな、と認識しておくと色々と役にたちます。

上の写真は室内の排水ルートです。どんな太さの排水管がどこを通っているのか、よく分かりますね。

 

調査対象の住戸を調べるとともに、マンション全体がどういった設計意図でつくられているのか、出来上がるまでどんな出来事があったのか、知っておくことは非常に重要です。建設途中で計画が2転・3転している物件ではやはり設計に綻びが生じやすいですし、実地と図面が整合していないマンションは現場監理が行き届いていなかったということです。中古マンションの購入前にそういう問題点を指摘できるのは、我々一級建築士だけであろうと思います。

 

さて、ひととおり過去の物件を懐かしんだところで、今回のマンションは状態もよく、図面もきっちり正確で、全然問題ないことが分かりました。採取したデータを元にプランニングに取り掛かりましょう。

 

 

溶融亜鉛メッキ工場の見学

投稿日: カテゴリー: 催し用語

建築士会の勉強会で溶融亜鉛メッキの工場へ見学に行ってきました。

 


溶融亜鉛メッキとは、鉄製品の錆の劣化を防ぐために表面を亜鉛でコーティングする技術のことで、「スパングル」と呼ばれる色むら模様が特徴です。

 

(亜鉛鍍金工業会資料より)

およそ400℃に溶かされた亜鉛の窯に鉄を浸けてメッキ処理を行う様子はさながら巨大なチーズフォンデュのようで、これだけ大きな具材で出来たらなー。と妄想しながら見学していました(笑)

 

メッキ処理に至るまでに様々な下処理と検査の工程があり、何気ない部材の一つにも多くの人の手間と労力が掛かる事を実感できて、とても勉強になりました。見学させて頂いた工場の皆さま、ありがとうございました。

 

風呂リモコン位置はどこが良いでしょう?

投稿日: カテゴリー: 用語

よくある洗面室+ユニットバスの間取りです。

通常、お風呂の追い炊きやお湯の温度調節のために、浴室内の壁面に「風呂リモコン」を設置しますが、最も適切な位置はどこでしょうか。

施工業者さんに何も指定しなければ、上図の①か②の位置になります。風呂の中だけの操作であればそれほど問題はありません。強いて言えば、②は入浴しながらリモコンを見つめ続けなければいけないので、①のほうが優れているかもしれません。

しかし、実際の生活で風呂リモコンを操作したいタイミングは入浴中だけではありません。洗面室でお湯を使いたい場合もかなりの割合を占めています。①②では、洗面室でお湯を使いたい時に浴室内に足を踏み入れてスイッチを入れなければなりません。最近はユニットバスの床材も改良され、乾燥しやすい素材が増えてきましたが、夜遅くに入浴して次の朝に洗面室を使う場合などには完全に床が乾ききっていない場合も多く、風呂リモコンのスイッチを入れる度に足の裏が濡れてしまう経験をされた方は多いのではないでしょうか。(でなければ、きちんと毎回ゴム靴を履いておられることでしょう)。

入浴中に操作しなければならないため浴室内には必要ですが、なおかつ洗面室からも足を踏み入れなくても操作できる位置がベスト。そういう訳で、私たちの事務所では③の位置を推奨しています。扉の近くに設置すれば、浴槽に入った時の後頭部とも干渉しませんし、視界からリモコンが消えることで①よりさらに浴室内がすっきり見えるメリットもあります。

奈良の木 助成制度など

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山本嘉寛建蓄設計事務所は平成29年度も引き続き、奈良県産材の利用を促進する「奈良の木」事業者として登録されております。・・・ということで、奈良の木を使用した住宅への助成制度の説明会に行って来ました。

以前の物件で、助成金申請にあれこれ手を尽くしたものの僅かな条件の不整合で獲得できなかった経緯があり、この助成金についてはかなり慎重に構えております。吉野杉を使えば助成金がもらえる!!と一見簡単そうに思えるんですが、色々ハードルが高いのです。

例えば建物の外壁には適用されません。住宅では外壁を焼杉貼にしたい案件はとても多いのに大変残念なことです(内装に使うより外装に使うほうが、ずっと多くの人に奈良県産材をアピールできるのに何故ダメなのでしょう)。また、原則的に最新の建築基準法を遵守した建物が対象のため、戸建てのリノベーションではその多くが対象外となっています。

古い建物では現行の建築基準法に合致していないものも多く(既存不適格)、建築基準法の成立以前に建設された町屋・古民家では確認申請の手続き自体を行っていません。つまり、新築木造住宅に主眼をおいた助成金なのです。これだけ空き家問題が取り沙汰され、古い建物を活かしていきましょう、という時代に、木造新築住宅に特化したキャンペーンを行う奈良県の姿勢には疑問を感じざるをえません。説明会でも質問を投げかけてみたのですが、全然響かなかったようでした。

耐震診断・耐震補強の助成金についても言えることですが、お役所が助成金を出すためには、対象建物が全く潔白な建物でなければいけません。建築基準法的にグレーな建物に助成金を出すと色々マズいことが起こりかねないからです。新築では最新の建築基準法によって確認申請を受けますので何も問題は起こりません。しかし、古い建物では、過去の時点での建築基準法で確認申請を受けているため、現在とは異なる基準で建物が成り立っています。また、長年生活をする上で駐車場に屋根をつけたり、子ども部屋を増築したり、という増改築を行っているケースもたくさんあります。明らかに違法状態の建物は論外ですが、本当に助成すべきは幾多の歴史をくぐり抜けてきて、さらにこれから使い続けていこうというお施主さまに恵まれた幸運な建築たちではないか、と思います。

そして今日の助成制度の説明会は県の担当者が書類を棒読みして終わり。いやはや、実に無駄な時間を過ごしました。

中古住宅インスペクター

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際限なく増える空き家と建売住宅。一向に大きくならない中古住宅市場。我が国の歪んだ不動産市場の原因の一つは中古物件を購入する際のリスクが高すぎることにあります。売主や仲介業者から「まあ、大丈夫でしょう」と言われても、果たしてどこまで信用してよいものやら。新築では施工者の責任が問われる構造や雨漏りの瑕疵も、中古住宅では「現況優先」を盾に責任を負わすことが難しい。そういう状況を少しでも改善しよう、ということで数年前から注目されているのが「インスぺクション」です。

 

日本語では「購入前診断」などと言われますが、中古物件(マンション含む)を購入する際、売買契約の前に第三者である専門家が現況を調査し、建物のありのままを依頼主に報告する仕組みです。

 

良いもの建てて蓄えよう、がキャッチフレーズ?な当事務所ではリノベーションの案件も多く、以前よりこの仕組みに着目していましたが、ようやく講習など手続きを受けて、「国土交通省インスペクションガイドライン準拠・建築士会インスペクター」に登録することができました。

 

今までも中古物件のご相談では建物の状況を拝見して、床下やら天井点検口やらを覗いては状況をお施主様にお伝えしていましたが、もう一歩踏み込んで、家全体を調べてオフィシャルな報告書としてご提示することが可能になりました。

 

インスペクションの一般への認知度は30%程度ということですので、まだまだ単体で業務として行うケースは少ないと思いますが、戸建・マンションリノベーションでは物件選びの際の一つの判断基準として使って頂けるのではないかと思っています。

DIYからDIMへ

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近頃DIYという用語もすっかり身近なものになりました。雑誌・TVで特集が組まれ、ホームセンターの折込チラシには必ずといって良いほどこの用語が踊っています。「自分でできることはプロに頼まず自分でやってみましょう。」「出来は多少悪くても自分だけが使うので問題ありません。」「ちょっとした工作も楽しいですよ。」「おまけにコストも大幅に圧縮できてお得です。」という誰もが納得の触れ込みですが、では果たしてDIYによって、多くの方々が創造力を発揮し、身近なものづくりにチャレンジする社会が到来したのでしょうか。
DIYとは皆様御存知の通り、Do It Yourself. の頭文字です。一見何の問題もなさそうですが、少し立ち止まって考えてみると、「自分」に対してmyselfではなくyourselfが与えられていることに気が付きます。つまり、自分で出来ることは自分でやろうぜ、と呼びかける「私」が居て、その呼びかけに応えて工事を行う「あなた」が居る。メディアやホームセンター、家具量販店である「私」が、「これとこれを買えば手軽につくれますよ。」「このパッケージに入った部材を組み立てれば出来上がりますよ。」と「あなた」を誘導し、組立費をコストダウンしながら商品に付加価値を与える実に巧みな販売戦略であるということが分かります。
一方で、ごく一部のクリエイター層にはすっかり浸透した「セルフリノベーション」という用語があります。だれも買わないような中古の不良物件に価値を見出して、自分たちの力で好きなように改造する。誰から頼まれた訳でもないので、そこにはmyもyourもありません。ゼロの状態から新しい空間を創造する魅力がある一方、完成形が見えないものづくりは苦難の連続です。私のような設計を生業とする者ですら二度とやりたくないと思うのですから、一般の方々にとって非常にハードルが高い行為であることは間違いありません。
この極端な2つのムーブメントをもう少し緩やかに結びつける何かを作れないか、という事は、私が独立して以来ずっと考え続けているテーマです。DIYは手軽である反面、あらかじめ完成形が定まっているために作り手の創造力が刺激されません。セルフリノベーションは思う存分創造力を発揮できますが、身を捧げる程の覚悟がないと踏み込めません。作り手の創造力を刺激しながら、手軽なツールとして用いることができる何か。DIYをDIM (Do it myself) に換えられる何かを作れないか、少しずつですが試行錯誤を行っています。

アレルギーと住まい

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先日、住宅のアレルギー対策について文章の依頼を頂きました。シックハウスやハウスダストといった言葉もすっかり浸透し、住環境が体に何らかの影響を与えるという事もここ10年ほどですっかり常識となりました。


ただ、(特に大人の)アレルギー疾患はたくさんの要因が複合的に関係して起こります。住宅に使う建材も確かに要因の1つですが、揮発性有機化合物(VOC)を含まない建材のみで住宅を作ったからといって、即その日からアレルギーが無くなる訳では決してありません。建材でアレルギーが解決するというのは単なる神話であり、マスコミや建材メーカーの妄言です。


建材のVOC含有量は建築基準法に定められた基準値がありますが、そこに置く家具や什器については特に基準がありません。過敏な方なら、電化製品から発散される微量の化学物質からでも影響を受ける可能性がありますが、現代では完全にVOCを払拭した生活を実現することはほとんど不可能です(有機栽培の野菜といっても、100%化学物質を含まないものを望めば、土壌や水、果ては空気まで拘る必要があるのと同じです)。従って、どのレベルまで許容するのか・制限するのか、という線引きが必要になりますが、もしお困りの方が「VOCが原因でアレルギーになっている」と固く思い込んでいれば、(もし実際に影響が微量でも)それがストレッサーとなってアレルギーを誘引するため実に厄介です。完璧・潔癖主義に対しては精神面のケアが避けて通れません。


また、住まいのアレルギー対策としてはVOC含有量に目を向けると同時に、生活習慣をいかに改善するか、という視点も必要です。自律神経の働きがアレルギーに大きな影響を及ぼすことはよく知られていますが、日の当たらない部屋の中で一日中篭った生活を送っていると自律神経の働きに狂いが生じ、アレルギーや不眠症の要因となります。寝室やダイニングに自然光、特に朝日を十分に取り入れることができる設計を行い自立神経の調整を助けることも、見落としがちですが我々が手助けできる重要なアレルギー対策の一つです。

施主工事のメリット・デメリット

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雑誌やTVの番組では、建主が工事に参加する「施主工事」の場面が多くみられます。普段建築工事にかかわったことがない方にとっては貴重な体験ができる機会。自分で自分の住まいをつくることで愛着も生まれ、おまけに工事費も安くなりそう。
・・・ですが現実的には、施主工事にはよって様々なリスクやデメリットが発生します。何となく自分で出来そうだから施主工事を選んだものの、思いのほか大変だし時間もかかってしまった、結局はじめから職人に任せたほうがよかったなあ、という事になっては本末転倒です。施主工事の採用にあたっては、様々な危険性を考慮する必要があります。
1.資材費・工具費がかかる
施主工事としても、材料は購入しなければなりません。従って正味費用がゼロになる訳ではありません(例えばペンキ塗りをするためには、ペンキ自体を購入しなければなりません)。また、専門の工具をお持ちでない場合は新規で購入する必要があります(ペンキ塗りなら、バット、ローラー、刷毛、マスキングテープ、作業服、靴・・・)。
2.傷・汚れ
施主支給と同様、施主工事についても、本工事を行う工務店との責任負担が曖昧になりがちです。特に多いのが傷や汚れについての問題。施主工事では現場作業に慣れない素人が工事を行うため、うっかり他の綺麗に仕上がった箇所を傷つけたり、汚したりしてしまう事があります。建主が工務店に弁償しなければならない事態に陥ってしまっては元も子もありません。そのため、多くの工務店では本工事の内容が完成して引渡が終わってからでないと施主工事はNG、と考えます。
3.時間がかかる
施主工事では、一つ一つの作業にプロの職人と比べて数倍~数十倍の時間を必要とします。本工事の完成前に施主工事を行う場合は、その完成を待ってから他の工程を行うことになり、全体の工程に遅れを生じれば現場管理を行っている工務店の経費負担が問題になります。また本工事終了後に施主工事を行う場合は、なかなか作業が進まず建築が完成したのに引越しを行えなかったり、引っ越してから工事も始めて、工事現場に住むような状況も多く見かけられます。
4.危険性
建築現場は様々な危険に満ちた場所です。資材の角で怪我をしたり高所から落下する可能性は絶えずつきまといます。また、リフォームなど古い建物の解体を施主工事で行う場合は、アスベストの含まれた建材を知らず知らずのうちに吸い込み・触ってしまう危険性があります(築30年超の建物では吹付でなくとも建材の中にごく普通にアスベストが含まれています)。
お施主さまの中には建設関係のお仕事をされていたり、大工工事や給排水・空調・電気工事の技能を有している方もおられます。そういう場合はまとまった減額が可能となりメリットも大きくなります。しかし一般的なDIYの範疇で施主工事を行う場合は、上記の様々なリスクが生じるため、一概にお得にはなるとは限りません。
ただ、「自分の家を自分の家をつくってみる」という考え方は、何にも代えがたいメリットです。昨今では災害時に自分独りでどういう建築工事を行うことができるのか、サバイバルの一環として基本的な建築技能を身につけておく必要性も高まっています。インパクトドライバーや丸ノコを使った大工工事、給排水配管工事程度は少し練習すればそれなりに体得できます。施主工事を行うことで、ブラックボックスだった「建築工事」を身近に感じられるようになるなら、それだけでも十分値打ちはあるのではないか、と思います。

施主支給とは。

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建築費を削減する方法はいろいろありますが、素材や仕様そのままに経費を削減する手段として、「施主支給」があります。通常は工務店が卸業者から仕入れる資材を施主(=建主)が別ルートで購入して現場に納入し、取付工事のみを工務店に依頼する手法です。

ある建材について、見積計上されている仕入値が高かった場合、建主がネットショップなどで激安価格の建材を購入して現場に納入すれば、その差額分だけ工事費を減額することができます。また、工務店の経費は全体の工事金額に応じた掛け率で決まってくるため、本工事から資材の分を除外すればその分の経費が無くなる、という考え方も出来ます。

今日では一般の方でも簡単にインターネットで建材を購入することができますので、商品を探す手間さえ惜しまなければ、工務店経由に比べて安い価格で資材を仕入れる事はそれ程難しいことではありません。特に照明器具や家具、カーテンなど単体の建材については施主支給は非常にメリットがある手法です。しかし一方で、工事と密接に関係する資材や設備については施主支給によるデメリットも考慮する必要があります。

1.ローンに含めにくい・・・施主支給扱いにより本工事の契約金額は下がりますが、契約に含めないということは通常、ローンに組み込むことはできません。融資先の審査にもよりますが、基本的には直接代金を支払う必要性が生じます。従って、施主支給が大きくなるほど、現金での負担が大きくなります。

2.現場納入時期の調整が難しい・・・建築工事では通常、現場の進捗に応じて工務店が順番に必要な資材を発注します。工程管理は請負業者の大事な業務の一つです。しかし施主支給の場合は、建主自身がメーカーや卸業者、現場監督と綿密に打合せして、いつ何を現場に納入すればよいのか調整する必要があります。ネットショップ等から資材を注文する場合は、納入日が予定より一日ずれてしまった、という事もしばしば起こります。しかしその日の取付けのためにやってきた職人が仕事を出来ず、もう一日余計に段取りするような事態になれば、余計に1日分の人件費(職人1人3万程度)を支払わねばならない事になってしまいます。さらにその遅れが他の工程に影響を及ぼす可能性もゼロではありません。

3.必要な部材の選定が難しい・・・建材や設備機器の中には、商品自体の他にビスや配管、配線など、付属部材が必要になるものがあります。建主が直接部材を取り寄せる場合は、それらの付属部材についても 過不足なく仕入れる必要があるため、商品やその取付方法についての知識が必要となります。

4.責任が曖昧・・・例えば水栓を施主支給し、それを工務店が組み立たとして 数年後に水漏れを起こった場合を考えます。水栓自体の不良が原因なのか、 取付工事に問題があったのかをはっきりさせることは非常に困難です。 工務店が発注した物品であれば、機器・工事どちらに問題があったとしても、 工務店が請負業者として責任を持ってメンテナンスする義務が生じますが、 施主支給が絡んだものについては責任外ということになってしまいます。


5.工務店の理解が必要
・・・工務店は資材と人件費について経費を計上することで利益を生み出しています。その中の資材の分を切り離すことは工務店にとってメリットがある話ではありません。また専門家でない方が現場に介在することで、むしろ通常の業務に比べて余計な労力が発生する場合が多く、上記4の問題もできれば避けたいところです。そのため、工務店によっては施主工事NG、という考え方の業者も存在します。

このように施主支給が増えれば増えるほど現場との蜜な連携が必要となります。建築業界にかなり明るい方でなければメリットよりもデメリットのほうが大きくなってしまう可能性が十分あります。結局最初から工務店に頼めばよかった、ということになっては本末転倒です。そのため当所では、ケースに応じて商品の調達や現場納入時期の調整についてサポートする業務を行っています。

本当は施主支給無しで全ての工事を行えればベストですが、リスク覚悟で削れるところは少しでも削って、出来る限り希望を叶えたいというお施主さまがほとんど。特に関西の皆様の厳しい金銭感覚をクリアするには、なりふり構わぬ工夫が必要です。

中古住宅のインスペクション

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中古住宅のリノベをお考えの施主さまと、検討中の物件を調査に。いわゆるホームインスペクションです。(⇒ホームインスペクションについてはこちら等を参照)

クラック発見。売主からは何の説明もなく、危うく見過ごされるところでした。

ユニットバスの天井から、屋根裏をごそごそ拝見。断熱材の留め付けが甘いですねえ。
中古物件を購入する際は、ふつう不動産会社と買主との直接交渉になりますが、不動産会社はプロ・買主は素人ですから、買主が著しく不利な交渉となってしまい、売主が言っていることがどこまで正しいのか判断することもできません。そこで、不動産会社よりはるかに建築に詳しい我々、設計を生業とする一級建築士が買主の立場に立って物件の現状を調査・査定する必要がある訳です。特にリノベーション前提の購入の場合は、契約前に希望のプランが叶えられそうなものか、ある程度当りをつけることは大変重要です。
なぜか関西では広がらないホーム・インスペクションですが、潜在的な需要はメチャメチャあるように感じます。弊所でも、もっとたくさんの方が安心して中古住宅を購入できるよう、物件の購入前の段階からお手伝いできる仕組みを検討中です。

見積もりの査定

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我々設計監理者にとって、見積の調整は極めて重要な業務です。建設会社から出てきた見積を一項目ずつ確認しながら、金額の間違い箇所はないか、少しでも安くできる項目がないか目を皿のようにしてチェックしていきます。なんだかよく分からない項目が羅列されているように見える見積書も、一つずつ分かるものから内容を調べていくと、どれぐらい精度が高い見積なのか、一般の方でもある程度の妥当性は確認することができます。もし建築工事の見積をチェックする機会があれば、是非一度お試しください。
まずは表紙や目次の部分に「見積条件」の記載がないか確認しましょう。見積時に不確定要素を含む場合、こういう状況を仮定して見積しました、という記載が書かれている場合があります。
次に全体的に計算式のミスや項目の重複がないか確認しましょう。見積を作成する側も人間、項目が抜けていたり桁が異常に多かったり、入力の際に間違えることが時々あります。また計算式が何かのはずみで正常に働かず、単価と個数、合計金額の整合性が合っていない場合もあり得ます。
依頼していた商品が計上されていない、別の商品が計上されている、という場合は見積業者に内容を確認したほうが無難でしょう。業者が値段を下げるために、同じようなもので別の商品を見繕い、「同等品」として見積りを行う場合があります。
また明細が不明で〇〇工事x一式=〇〇円、というアバウトな項目が多い見積や、見積自体は項目ごとに算出しているが最終的に出精値引きで大きな金額が引かれている、といった場合も金額算定の根拠が明らかではないため、あまりよろしくない見積といえます。そのまま工事が問題なく終わればよいのですが、途中で内容を変更・中止した場合に増減金額が妥当なのかどうか判断できなくなる危険性があります。
定価がわかる商品はそれがいくらの比率で計上されているか確認することである程度のチェックが可能です。たとえば照明器具AとBがあったとして、同メーカーの別品番同士、という場合は基本的に定価に対して同じ比率で仕入れが行われているはずです。掛け率が商品ごとにまちまち、という見積は、そこに何か不明瞭な料金が上乗せされている可能性があります。
我々が見積を査定する場合はさらに細かく、各項目ごとの数量と設計図の面積や数量が一致しているか、もう一歩踏み込んで確認していきます。なかなか骨の折れる作業ですが、減額項目が見つかった時の喜びを求めて明日もまた目を皿にしていきます。

リシン吹付けのリシンとは何?

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先日、アメリカ大統領に送り付けられたというニュースが話題になった「リシン」。建築では外壁の仕上げ材に「リシン吹付」が非常によく使われています。何でも青酸カリの1万倍の毒性らしいですが、そんなもの建材に使って大丈夫?それとも別物???ということでちょっと調べてみました。

建材の「リシン吹き付け」といえばこれ。外壁仕上の定番ですね。(シポカケン[エスケー化研])

 

リシン[Ricin]・・・トウゴマ(ヒマ)の種子から抽出されるタンパク質。猛毒のリシンはこれ。

リシン[lysine]・・・α-アミノ酸のひとつ。これは毒じゃないみたいですが、建築資材とは違うようです。

(以上写真・テキストはwikipedia)

ということでネットで調べてもほとんど情報がありません。リシン吹き付けって一体・・・色々調べてみると、日本建築仕上材工業会のホームページに下記のような記事がありました。

「仕上塗材の一種である樹脂リシンやセメントリシンは砂が散布されたような仕上がりとなる材料ですが、和製英語のスペルは「lithin」で、ヒマ(Ricinus communis)の実から得られる毒素リシン(ricin)とは全く異なります。」

 

少ない情報から推測すると、昔日本に入ってきた石目調の吹付材の商品名が「lithing」だったので、それがそのまま和製英語として定着してしまった、ということのようです。「lith」は石版を意味するモノリスのリスですね。なるほど納得ですが、猛毒と同じ名前なんて非常に紛らわしい。こんどからθに気をつけて発音したいと思います(笑)。

合理化/VE

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われわれ設計事務所が建築をつくる場合は、自前で施工部隊を持っていないために設計時点で工事費用がいくらかかるか算出することができません。それがメリットでもありデメリットでもあります。経験と大まかな坪単価を頼りに設計を行い、工務店に合い見積を取ってからが本格的な費用調整を行います。そのため設計段階ではとりあえず見積もりに入れておいて高くつくようなら止めよう、という項目がいくつも出てきますので、見積金額は予算を超過することが普通です。(場合によっては予算の1.5倍程度に膨らむ場合もあります。)
見積の内容を比較検討して、取捨選択することで予算内に収まればよいのですが、それでも予算オーバーとなる場合は仕様の見直しを行う必要が出てきます。これを業界的に「合理化」「VE」と言っています。
VE(Value Engineering)とは、製品やサービスの「価値」を、それが果たすべき「機能」とそのためにかける「コスト」との関係で把握し、 システム化された手順によって「価値」の向上をはかる手法です。(日本バリューエンジニアリング協会HPより抜粋)
見積の全項目について細かく査定し、本当に必要なものとそうでないものを区分けしていく作業は、お施主さまにとっては「計画を実現する上で本当に大切だと思っていることは何か」という問題に立ち返ることになります。これはなかなか難しい問いですが、新しい建築をつくり、この先数十年を展望する上ではとても重要なことではないかとも思います。
一般的に見れば瑣末な要件でも、その方にとっては譲れない大切なもの、という場合も多々あります。こだわりというのは一見無いようで、突き詰めれば身の回りの色々なところに潜んでいます。まさに無くて七癖。そういう顕在化したこだわりの結晶として、他にはない建築が出来ればとても良いなあと思っています。

新築にかかる税金

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今年に入ってローコスト住宅のご相談が多く、厳しい資金計画と建築コストのバランスに悩む日が続いています。シビアな計画になると、建築費以外にかかってくる諸経費についても事前にある程度のめぼしを立てておかねば計画自体が破綻してしまう可能性が出てきます。
本日は新築に関わる税金についてのまとめです。
土地と新築住宅に係る税としては、「固定資産税」「都市計画税」「不動産取得税」の3つが上げられます(消費税除く)。これら3つの算出には、固定資産台帳に記載された登録価格が基になります。
■固定資産課税台帳登録価格
【土地】台帳価格は購入価格の50~70%程度が一般的。路線価からある程度の判断を行うこともできる。
→全国地価マップ
[想定金額]=A
【建物】台帳価格は建築費の50~70%程度が一般的。(正確な金額は役所が調査の上決定するため竣工前には確定しない)
[想定金額]=B
このA、B2つをそれぞれの税の計算式にあてはめていきます。
■固定資産税(市町村税)
【土地】
[計算式] 台帳価格×1.4/100
[減免] 200㎡以下の住宅用地は1/6に減免
[想定金額] A×1.4/100×1/6
【家屋】
[計算式] 台帳価格×1.4/100
[減免] 3F以上耐火建築物の新築なら5年度まで税額x1/2、それ以外の新築は3年度まで税額x1/2
[想定金額] B×1.4/100/2 ※ただし3または5年度まで
■都市計画税(市町村税)
【土地】
[計算式]課税標準額×0.2/100
[想定金額]A×0.2/100
【家屋】
[計算式]課税標準額×0.2/100
[想定金額]B×0.2/100
■不動産取得税(道府県税)※取得時1回だけ必要
【土地】
[計算式]台帳価格×3/100
[減免]
①宅地の場合は台帳価格の1/2とする
②45000円、または床面積×2×(土地の課税台帳価格×1/2÷土地面積)×3%の大きいほ
うだけ軽減
[想定金額]
床面積×2×(A×1/2÷土地面積)×3% と A×1/2×3/100  の大きいほう
[補足]減免①の特例はH24/3/31までの適用
【家屋】
[計算式]台帳価格×3/100
[減免]新築住宅・自己居住用で50㎡以上は1200万円まで控除
[想定金額] (B – 12,000,000 )×3/100
[補足]
・減免にあたっては道府県への申請必要
実際は家屋の評価額が経年により下がっていくため、なかなか正確な想定は難しいようです。

同じ床面積でもローコスト化できる?

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突然ですが問題です。

2辺の長さがa,bで面積がAの長方形がある。この外周の長さが最小となるa,bの値を求めよ。

a,bの長さに関係なく、面積が一定なら外周の長さも同じような気もしますが、正解はa=b=√A、 要するに正方形です。建築にあてはめて考えてみると、屋根勾配がないハコ型の建物なら、正方形の平面形状にすると最も表面積が少なくて済み効率的、というになります。

構造設計の面からみても、極端に細長い建築物は短手方向の耐力を確保しにくく、建物内部に壁が増えたり、特殊な設計が必要になる場合があります。建築のローコスト化については延べ床面積の大きさや建材のグレードばかり問題になりますが、実は建物の形状も重要な要素です。

四つ角の家・・・8.1m角の完全な正方形プランとしてローコスト化にも貢献

とはいえ、自由に建物の形状や配置を考えられる広大な敷地は日本には少なく、いわゆる「うなぎの寝床」に代表されるような、間口が狭く奥行きが長い敷地がたくさんあります。うなぎの寝床は狭い隣地境界沿いの難しい工事や、密集市街地における準防火地域対応など、コスト高にならざるを得ない要因が他にもたくさんあり、設計が非常に難しいのですが、デザイン的には特徴的で面白い建築を計画しやすいので、悩ましいところです。

『』の家・・・うなぎの寝床のポテンシャルを引き出す。

【高校生並み証明】

A=abよりb=A/a
外周長さは
2a+2b=2a+2(A/a)
=2(a+A/a)
相加平均・相乗平均の関係より
a+A/a≧2√(a・A/a)
⇔a+A/a≧2√A
等号成立はa=A/aの時⇔a=√Aのとき (このときb=√A)
よって外周長さ
2a+2b≧4√A
最小となるときのa=b=√A

こんなもんでしょうか。。

アイランドキッチンのプランニングいろいろ

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アイランドキッチン。キッチンと壁面を切り離して、LDKの中にキッチン空間を組み込めばLDKが大きくなって、キッチンも単なる作業空間じゃなくなって良いんじゃないか、という考え方です。今ではメーカー製のシステムキッチンでもアイランド型がたくさん出ていますので、一般にもよく知られています。われわれ設計事務所でキッチンをつくる場合には、キッチンだけではなくてダイニングテーブルまで含めてつくってしまうケースが多いです。

■Fig1:一般的なアイランドキッチン~ダイニング一体型のイメージ

一般的なイメージとしてはこういうものでしょう。大きなすっきりしたカウンターがLDKに浮かんでいるイメージですね。もちろんつくろうと思えばつくれます。しかしキッチンはあくまで作業をするスペースですので、実際の使い勝手を考えると色々問題が出てきます。

 

■Fig2:実際的なアイランドキッチン~ダイニング一体型

キッチンは立って作業するところなので、そのカウンターの高さは85-90cmが適正です。一方テーブルは座って肘をついた時に無理な姿勢にならない高さが標準なので70cm+αが適正。そのためダイニング側とキッチン側でカウンター高さに15cm程度の段差がつきます。また、普通はコンロの上には強力な換気扇をつけますので、それが天井からぶら下がってきます。さらにコマゴマとした器具類と、冷蔵庫の置き場所も確保してあげる必要があります。

そう考えるとダイニング・キッチンにはかなり大きな空間が必要になることが分かってきます。

 

■Fig3:パントリーを設置した案

冷蔵庫やコマゴマとした器具類はあまり見栄えがよろしくないので、スペースに余裕があれば別室をつくって収めたほうが良さそうです。引き戸にしておけば普段は使い勝手も一直線型キッチンと変わりません。

 

■Fig4:あくまでアイランドにこだわる案

こんろの隣に冷蔵庫を置き、その周囲を壁で囲ってしまう形もあります。レンジフードをアイランド型ではなく壁付け型にできるのでコストは幾分抑えられます。デザイン的には、あまりすっきりしません。

■Fig5:シンク・コンロ分離案(ダイニングとコンロ一体)

キッチンのコンロとシンクを切り離す計画はとてもスタンダードですが、やはりメリット・デメリットが付きまといます。シンク廻りを切り離せばダイニングカウンターは全体を高さ70cmですっきりつくることができます。しかしカウンター上にレンジフードが出てきます。(床引き型のレンジフードを使うという手もありますが、まだ一般的ではないですね)

 

■Fig6:シンク・コンロ分離案(ダイニングとシンク一体)

一方、コンロ廻りを切り離すと、カウンター上にレンジフードが来ないので上空はすっきりします。その代わりやっぱりカウンターには段差が必要です。

 

■Fig7:シンク・コンロ分離案(ダイニングとシンク一体なおかつカウンターは段差なし)

どうしてもカウンターに段差が欲しくない場合は、逆にキッチン廻りの床面を15cm程度下げてしまうという荒業も考えられます。若干使い勝手は悪くなりますが、キッチン自体の収まりは格段によくなります。

 

■Fig8:おまけ。最近のはやり。

細長いダイニングキッチンではなく、ほぼ正方形の形につくって大きな机をみんなで囲む形が多くなりつつあります。カップル同士で喫茶店に行くとき、対面で食べるより、90°向かい合って食べるほうが親密度が上がるともいいますし、こういう形は食事が楽しそうな感じはします。ただカウンターの段差、冷蔵庫、レンジフードの問題はやっぱりどうにかして解決しなければいけません。

シンプルそうに見えるアイランドキッチンですが、使い勝手を考えるとなかなか難しいものです。ちゃんと設計されている場合はこれらのどれかになっている場合がほとんどです。それ以外の場合は、座面の高い椅子を使うとか、レンジフード無しにしてしまうとか、どこかやせ我慢してるんだなぁということですね。

当事務所で設計する場合は基本的にはやせ我慢しない形で考えます。お施主さまが「ミバ優先で!」と言われる場合には、もちろん喜んで対応させていただきます。

1帖の広さ

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住宅レベルの建築に関する面積の単位はだいたい3種類です。よくご存知の㎡、帖(畳)、坪がそれです。大きさを図にするとそれぞれこんな関係性になります。

1坪は畳2枚分の広さです。しかし1帖という広さは、畳1枚の大きさをどう考えるかによって微妙に変わってしまうので注意が必要です。(不動産図面では「現況を優先します」という一文でその辺りをバッサリ曖昧にしてしまいます)

一般的には
畳一帖=909mm x 1818mmと考えて計算しますので

1㎡=0.3025坪=0.605帖

です。現代でも室内の大きさを表す時は「帖」、土地の大きさを表す時は「坪」が日本人には分かりやすいようです。ちなみに300坪で1反(段)となり、田んぼの大きさによく用いられます。なぜ300坪で1区切りかというと、300坪で米の生産量で1石に相当するためらしいです。単位や尺貫法は調べていくと、なかなか奥深いものがあります。

普請は道楽?

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明治期に「建築」という言葉が生まれる以前、わが国では建物をつくることを何と表現していたのでしょう。

調べたところによると、「普請」ということばがそれに当てはまるようです。最近では「安普請(安く建てた家)」「普請道楽(家にお金をかけまくる)」という使い方程度にしか残っていない単語なので、何となくイメージが良くない気もします。しかし普請とは普く(あまねく)請う(こう)ことであり、まさに多くの人に手伝ってもらう、という言葉です。元々は仏教用語だったようですが、昔は一つの建物を作り上げるまでにたくさんの人の力が必要だったので、その代表的な単語である「普請」を家づくりを指す言葉として使ったのでしょう。ちなみに「普請」と同じような意味の単語に「勧進」があります。寺社をつくる際に寄付を呼びかける文章を「勧進帳」と言い、歌舞伎の演目にもなっているのでご存知の方も多いと思います。

さて、みんなに手伝ってもらうことをあらわす「普請」。現代ではそういうイメージをもって家作りに臨むお施主さまは殆んどいないと思います。ハウスメーカーとの家作りでは主な相談先は営業マンということになりますし、建売住宅を購入する場合は作り手との接点自体が存在しません。

しかし現代でも、一つの建物が出来上がるまでに多くの人の力が必要となること自体は変わりありません。建設会社が工事を請け負う場合でも実際に作業を行うのはその建設会社の取引先の大工・金物・サッシ・家具・電気・ガス・水道・空調といった専門の職人さんたちです。現場では様々な職人さんたちに設計のイメージを伝え、逆に専門的な意見を聞きながら、イメージどおりでしかも用に耐えるのものを生み出していきます。我々が設計図に書くことはいわば机上の空論なので、実際施工する側の視点で考え直すプロセスがとても重要です。

や「こんな感じに出来たら絶対いいと思うんですけど、難しいですかねえ?」
現「やってできないことないですけど、こんな感じのほうがいいんちゃいますかねえ」
や「いやー、それは考えたんですけどね~。それやとここがうまく行かないんですよー。」
現「うーん、じゃあここをこうすれば?」
や「おお、それはむっちゃイイっすねえ。それで行きましょう!」

そんなやりとりはまさに「普請」といえるものです。

普請を重ねた建築は、一人の設計者ではなく現場全体の意思のカタマリとして立ち上がってきます。逆にコミュニケーションが機能不全を起こした現場は、イメージどうりには出来上がりません。現代における普請、現場監理はとても重要です。