
清水焼の倉庫を活用した職住一体長屋
京都市東山区六原地区は清水寺と鴨川の間、五条通の北に位置し、町家や寺社が軒を連ねる街並みが多く残る地域です。狭小な路地や老朽化した木造家屋、空き家の増加、民泊・ゲストハウスへの転用、観光客によるプライバシーの侵害など京都市が抱える都市的な課題に直面しながら、それらに協力して取り組む住民活動も活発です。地区の一角には、戦前に建てられた賃貸長屋が立ち並び昭和小路と呼ばれる狭い路地があり、今も多くの人々が暮らしています。住民の方々の働きかけにより、昭和小路は建築基準法第42条3項道路の指定を受け、幅員2.7mの路地空間が保存されていますが、長屋の老朽化と住民の高齢化が進み、建物を健全な状態に改修して地域コミュニティを次なる担い手へ継承していく必要に迫られています。
長屋の多くを維持管理する株式会社KOMOCHIYAでは、入退去のタイミングで住戸を抜本的にリノベーションする事業を2017年より開始し、2022年までに3区画の改修を行いました。高度経済成長期に新建材を用いてリフォームされた箇所を除去して、坪庭や見世の間のある京町家ならではの空間を復旧し、職住一体の生活が可能な間取りにリノベーションすることで家具デザイナーやパティシエールなどバリエーション豊かな住み手を呼び込む事に成功し、長屋の年齢層も若返りつつあります。2023年、地域の活動の核となる拠点をつくり人々の交流を促進するために、昭和小路から枝分かれした細い路地の先に長い間放置されていた古い長屋を一棟改修することになり、「ココナガヤ」のプロジェクトがスタートしました。
建築基準法上の可否、事業収支、地域との関係性などを多角的に検討し、小商いが出来るメゾネット賃貸住戸が3つと、多目的に利用できるコモンスペースが立体的に組み合わさる間取りが導き出されました。京町家まちづくりファンド委員会の助言を仰ぎながら建物の履歴を検証する中で、この建物が通り庇と出格子のある一般的な京町家ではなく清水焼の倉庫としてつくられた「倉庫長屋」であったことが判明し、新築当時の意匠を尊重しつつ間取に応じた修景を行うことで、和洋が混交した戦前の手工業の匂いのする独特なファサードとなりました。性能面では限界耐力計算による耐震改修を行うと共に、軒裏・開口部の防火改修を行い、将来に渡って安全・安心に使うことが出来る建物にアップデートしました。
Coco-nagaya











ココナガヤの軌跡
概要 新築年|1928 計画|2023-2025 所在地|京都市東山区五条橋東4丁目432 構造規模|木造2階 用途|長屋 延床面積|60坪[198m2]
協働 意匠・設備設計監理|山本嘉寛・中村美結・松川裕成[yyaa] 構造設計監理|東郷拓真・菊田菜美子[IN-STRUCT] ランドスケープ|松下岳生[ 素地] コンサルティング|田村篤史[Tunagum]、水口貴之[ 京都R 不動産]、小原亜紗子[Roomie] Web・ロゴデザイン|戸田浩一 管理運営|石田聡一郎[KOMOCHIYA]、戸田浩一、吉田瑞希 施工|[城南組] シャッター|[勇翔シャッター] 看板|[原田琺瑯製作所]
認定・助成 路地のある町並みを再生するための道路指定制度[京都市] 大規模の修繕・模様替に伴う接道規定の適用除外に係る認定制度[京都市] 京町家まちづくりファンド改修助成事業[京都市景観・まちづくりセンター] 京町家・木造住宅 耐震・防火改修支援事業|まちの匠ぷらす[京安心すまいセンター] 防災まちづくり支援事業|まちなかコモンズ[京都市]



