column|古民家改修のすゝめ② 間取りや見た目を考える前に。

■間取りや見た目を考える前に

古民家改修といえば、古い柱梁を露出にして、レトロな建具や家具調度に囲まれて、無垢材や土壁などナチュラルな素材を使って、縁側や庭もあったりして・・・など住み方のイメージは比較的持ちやすいのですが、そこに至る前に、50〜100年前の生活スタイルで建てられた家に果たして安全・安心に住めますか?という問題が生じます。住み方のイメージを膨らませることも大切ですが、具体的にそれを実現させる上でどのような超えるべきハードルがあるか、知っておくことも重要です。

A.構造補強
【大正~戦前】の多くの木造住宅は石の上に柱を直接乗せただけの「石場建て」で建てられています。地面と建物の縁を切り、地震に対してしなやかに揺れる日本古来の考え方に価値を見出し、伝統工法による改修を行う方向性もありますが、今日それを行うためには大変な時間・労力・費用を要するため、文化財指定を受けるようなお屋敷や寺社でなければ現代的な構造形式への改修が現実的であろうと考えています。すなわち、鉄筋コンクリート造基礎への置換、筋交いや合板による壁面・床面補強、金物による接合部補強です。また、屋根は10〜20cm程度の葺き土の上に瓦が載っているため、土を撤去して軽量化を図る必要があります。【東京オリンピック~70年代】の木造住宅ではコンクリートの基礎の上に土台・柱が乗っています。基礎が適切に施工され不具合も生じていなければ、補強が不要な場合もあります。しかし鉄筋が入っていない無筋コンクリート基礎であったり、不同沈下などで大きな割れが生じてしまっている場合は補強が必要です。また、多くは布基礎(丄型の基礎)なので、床下の多くの部分は土が露出しています。構造面でも湿気対策の面でも、リノベーションの機会にベタ基礎(全面基礎)に変更する方が得策です。柱梁には、耐力壁の追加・床構面の強化・金物による緊結を行います。屋根は土葺きではない引掛け桟瓦葺きや、鋼板・化粧スレート葺きの軽量屋根であれば構造への負担は小さいですが、建材の劣化に伴って屋根を葺き替える場合は野地板を構造用合板に変更して水平構面を強化します。

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B.設備の更新
戦前の古民家の設備がそのまま残っているケースは珍しく、昭和期に土間の炊事場をキッチンに、離れにあった浴室や便所を宅内にリフォームされている事がほとんどですが、そのリフォーム工事の際に増築して庭や縁側が無くなってしまっていたり、古い井戸を上から埋めていたり、と問題が生じてているケースが多いため、当初の建物の在り方に立ち戻って、適切な設備設計を行う必要があります。また、建物内外の設備配管・配線(給水・給湯・排水・電気・換気・空調・ガス)は全て敷設しなおす工事が基本となります。
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C.断熱性・気密性の向上
戦前の古民家では断熱という考え方がありません。土壁は、調湿能力については大変優れていますが断熱性は期待できません。同じ厚みで比較すればグラスウールの1/10以下です。床下も風が通り抜ける外部なのでほぼ断熱性はゼロです。古い木製建具も経年変化で木材が痩せると隙間風がいくらでも入る状態になります。ガラスも薄い単板ガラスです。そういう夏暑くて冬寒い家こそ古民家の本質だ、というストイックな方でなければ、床・壁・天井・開口部の断熱性・気密性を高める工事が必要です。
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D.防水性の確保
瓦は耐久性・防水性の高い優れた材料ですが、台風や地震でずれたり、漆喰にヒビが入ったまま放置すると、そこから徐々に浸水が始まります。雨は土葺、野地板、天井、と室内に伝って漏水被害が発生します。長年漏水が続くと柱梁の腐朽や白蟻被害へつながります。また、外壁や窓も劣化している場合が多いので、構造補強・断熱補強と合わせて屋根・外装・窓工事を行い、防水性を高める必要があります。
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E.廃棄物の処分
葺き土や土壁を撤去すると膨大な量の土の廃棄物を生じます。寺社の改修では土壁を練り直して再利用する場合もありますが、やはり大きな手間・時間・費用を要するため、一般住宅では廃材として処分することが適切であろうと考えています。
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