column|古民家改修のすゝめ③ 東京オリンピック~70年代

A.構造補強
東京オリンピック~70年代の木造住宅ではコンクリートの基礎の上に土台・柱が乗っています。多くは鉄筋コンクリート造の布基礎(丄型の基礎)です。構造面でも湿気対策の面でも、リノベーションの機会にベタ基礎(全面基礎)に変更することをおすすめしています。新築時に丁寧に建てられた住宅では当時からベタ基礎を採用しているものもあり、その場合は特に基礎の補強は不要です。一方で、鉄筋の入っていない無筋コンクリート基礎、施工技術の問題や不同沈下によって割れてしまっている基礎など、大がかりな基礎補強が必要になる場合もあります。柱梁には、耐力壁の追加・床構面の強化・金物による緊結を行います。屋根は瓦でも、土葺きではない引掛け桟瓦葺きが増えてきます。カラーベストや鋼板葺きの軽量屋根も見られます。それらは(構造的には)大きな問題はありません。

B.設備の更新
この時期の住宅設備機器は耐久性が高く一応そのまま使える状態で、見ようによっては昭和レトロでかわいいものの、現代の生活スタイルに合わなくなってしまったり、より便利な設備へと移行してしまったものが多くみられます。例えば浴室では浴槽のまたぎが大きかったり、深いものが多く、そのままでは危険を伴います。小便器や和式便器も、今ではほとんど採用されません。そのため間取りに応じて一通りアップデイトする設計が基本となります。ただ、健全な配管・配線についてはそのまま利用できる場合もあり、戦前の古民家に比べると比較的更新は容易です。

C.断熱性・気密性の向上
この時期の古民家では、ある程度断熱の考え方が普及しているため、解体するとグラスウール断熱材が見つかる場合があります。ただその厚みは現在の基準と比較すると薄く、劣化している場合も多いので、やはり全体的な断熱工事は必要です。古いアルミサッシもアルミ枠にシングルガラスを嵌めたものなので断熱性は低く、更新したほうがベターですが、最低限の防水性を保持していれば、内側に樹脂サッシや木製建具を入れて断熱性を高める方法もあります。

D.防水性の確保
屋根・外壁については、建物の状態によっては部分的な補修に留めたり、将来工事として当座はそのまま利用できる場合があります。外部足場を組まずに済めば大きな工事費の削減が見込めます。

E.廃棄物の処分
この時代の住宅では、内装・外装にアスベストを含有した建材が多々用いられています。飛散しなければ人体被害はないと考えられていますが、解体処分にあたっては、建材の試料採取及び試験と、定められた手順に従った処分が義務付けられています。処分費は一般的な廃棄物より割高となりますが、どのぐらいアスベスト含有建材が用いられているかは調査しなければ分かりません。そのため解体費が大きくなるリスクを孕んでいます。また、この時代では地方に行けばまだまだ土壁を用いた住宅も多いので、その場合は戦前の古民家同様、土の撤去処分が必要となります。