それでも「古民家」を改修すべきか。

このように、古民家改修を実現するためにはたくさんのハードルを1つずつ越えていく必要があります。そのため決して万人にお勧めできるものではありません。限られた予算・時間の中で、古民家改修と新築、両面から家づくりを検討中の方には、間違いなく新築をお勧めします。省資源・ストック活用の観点からいえば古民家改修のほうが断然良いのですが、様々なリスク、ローンや助成金の手篤さ、間取りが制約を受けること、地盤の補強が困難であること、等を考えると、新築でも良いのであれば敢えて古民家改修を選ぶ必要がない状況です。それでも古民家改修を選ぶ方々には、古民家改修でなければならない理由があるからです。私たちの事務所で実現したものは、多い順に次の3種類の理由があります(複合的な場合もあります)。

1.思い入れのある建物のため、残して活用したい。
2.法律上、改修を選択すべき状況である。
3.どうしても古民家暮らしがしたい。

1.はご自身の生家や、空き家になった親族の家を改修して住むケースです。不動産売買のトラブルや近隣トラブルが起きる可能性が少なく、建物の過去の履歴も辿りやすいので割とスムーズに計画が進みます。2.は法律の改正により建て替えが出来なくなった土地(再建築不可)や、道路後退、道路斜線、市街化調整区域指定などで、建替えると現況よりずっと小さな規模の建物しか建たない場合です。この場合は新築の方向性がそもそもないので、覚悟を決めて改修に邁進する以外ありません。その次が3.で、古民家に住みたいという熱意で様々な苦難を乗り越えられる場合もあります。

古民家改修をご検討される場合は、まずは本当に古民家改修を選択すべきかどうか、関係者の方々の間でよくご相談下さい。熟考の上、導き出された結論が古民家改修であれば、完成までの道のりは険しくも楽しいものになり、必ず優れた建築が出来上がります。私たちはそれを出来るだけ安く・早くお届けできるよう、全力でお手伝いします。

2.の例:佐保路の家 before

増築されていた店舗を撤去し建設当初の姿に復原。庇や木格子を復活。アルミサッシを木製建具に変更。土壁や板貼を補修。

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4.の例:愛でる家 before

一戸建て住宅リノベーション・古民家耐震改修の施工事例|愛でる家【山本嘉寛建築設計事務所YYAA】大阪・奈良・京都|建築家

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性能の向上

デザインや間取りを考える前に、古民家に住むためには劣化した部分を修繕し、時代に合わなくなった部分を更新して、現代人が住める環境に改善しなければなりません。そのために必要な作業として最低でも次の5つが挙げられます。

A.構造補強
B.設備の更新
C.断熱性・気密性の向上
D.防水性の確保
E.廃棄物の処理

これらは建物の築年数に応じて、ある程度共通の問題と解決策が考えられます(途中でリフォームされている住宅ではその工事が行われた時代の考え方が建物に反映されているため、どの時代まで遡って改修すべきか、その部位ごとに考える必要があります)。特にご相談の多い2.4のケースを例に、引き続きご説明します。