山本嘉寛建蓄設計事務所は平成29年度も引き続き、奈良県産材の利用を促進する「奈良の木」事業者として登録されております。・・・ということで、奈良の木を使用した住宅への助成制度の説明会に行って来ました。
以前の物件で、助成金申請にあれこれ手を尽くしたものの僅かな条件の不整合で獲得できなかった経緯があり、この助成金についてはかなり慎重に構えております。吉野杉を使えば助成金がもらえる!!と一見簡単そうに思えるんですが、色々ハードルが高いのです。
例えば建物の外壁には適用されません。住宅では外壁を焼杉貼にしたい案件はとても多いのに大変残念なことです(内装に使うより外装に使うほうが、ずっと多くの人に奈良県産材をアピールできるのに何故ダメなのでしょう)。また、原則的に最新の建築基準法を遵守した建物が対象のため、戸建てのリノベーションではその多くが対象外となっています。
古い建物では現行の建築基準法に合致していないものも多く(既存不適格)、建築基準法の成立以前に建設された町屋・古民家では確認申請の手続き自体を行っていません。つまり、新築木造住宅に主眼をおいた助成金なのです。これだけ空き家問題が取り沙汰され、古い建物を活かしていきましょう、という時代に、木造新築住宅に特化したキャンペーンを行う奈良県の姿勢には疑問を感じざるをえません。説明会でも質問を投げかけてみたのですが、全然響かなかったようでした。
耐震診断・耐震補強の助成金についても言えることですが、お役所が助成金を出すためには、対象建物が全く潔白な建物でなければいけません。建築基準法的にグレーな建物に助成金を出すと色々マズいことが起こりかねないからです。新築では最新の建築基準法によって確認申請を受けますので何も問題は起こりません。しかし、古い建物では、過去の時点での建築基準法で確認申請を受けているため、現在とは異なる基準で建物が成り立っています。また、長年生活をする上で駐車場に屋根をつけたり、子ども部屋を増築したり、という増改築を行っているケースもたくさんあります。明らかに違法状態の建物は論外ですが、本当に助成すべきは幾多の歴史をくぐり抜けてきて、さらにこれから使い続けていこうというお施主さまに恵まれた幸運な建築たちではないか、と思います。
そして今日の助成制度の説明会は県の担当者が書類を棒読みして終わり。いやはや、実に無駄な時間を過ごしました。