アイランドキッチン。キッチンと壁面を切り離して、LDKの中にキッチン空間を組み込めばLDKが大きくなって、キッチンも単なる作業空間じゃなくなって良いんじゃないか、という考え方です。今ではメーカー製のシステムキッチンでもアイランド型がたくさん出ていますので、一般にもよく知られています。われわれ設計事務所でキッチンをつくる場合には、キッチンだけではなくてダイニングテーブルまで含めてつくってしまうケースが多いです。
■Fig1:一般的なアイランドキッチン~ダイニング一体型のイメージ
一般的なイメージとしてはこういうものでしょう。大きなすっきりしたカウンターがLDKに浮かんでいるイメージですね。もちろんつくろうと思えばつくれます。しかしキッチンはあくまで作業をするスペースですので、実際の使い勝手を考えると色々問題が出てきます。
■Fig2:実際的なアイランドキッチン~ダイニング一体型
キッチンは立って作業するところなので、そのカウンターの高さは85-90cmが適正です。一方テーブルは座って肘をついた時に無理な姿勢にならない高さが標準なので70cm+αが適正。そのためダイニング側とキッチン側でカウンター高さに15cm程度の段差がつきます。また、普通はコンロの上には強力な換気扇をつけますので、それが天井からぶら下がってきます。さらにコマゴマとした器具類と、冷蔵庫の置き場所も確保してあげる必要があります。
そう考えるとダイニング・キッチンにはかなり大きな空間が必要になることが分かってきます。
■Fig3:パントリーを設置した案
冷蔵庫やコマゴマとした器具類はあまり見栄えがよろしくないので、スペースに余裕があれば別室をつくって収めたほうが良さそうです。引き戸にしておけば普段は使い勝手も一直線型キッチンと変わりません。
■Fig4:あくまでアイランドにこだわる案
こんろの隣に冷蔵庫を置き、その周囲を壁で囲ってしまう形もあります。レンジフードをアイランド型ではなく壁付け型にできるのでコストは幾分抑えられます。デザイン的には、あまりすっきりしません。
■Fig5:シンク・コンロ分離案(ダイニングとコンロ一体)
キッチンのコンロとシンクを切り離す計画はとてもスタンダードですが、やはりメリット・デメリットが付きまといます。シンク廻りを切り離せばダイニングカウンターは全体を高さ70cmですっきりつくることができます。しかしカウンター上にレンジフードが出てきます。(床引き型のレンジフードを使うという手もありますが、まだ一般的ではないですね)
■Fig6:シンク・コンロ分離案(ダイニングとシンク一体)
一方、コンロ廻りを切り離すと、カウンター上にレンジフードが来ないので上空はすっきりします。その代わりやっぱりカウンターには段差が必要です。
■Fig7:シンク・コンロ分離案(ダイニングとシンク一体なおかつカウンターは段差なし)
どうしてもカウンターに段差が欲しくない場合は、逆にキッチン廻りの床面を15cm程度下げてしまうという荒業も考えられます。若干使い勝手は悪くなりますが、キッチン自体の収まりは格段によくなります。
■Fig8:おまけ。最近のはやり。
細長いダイニングキッチンではなく、ほぼ正方形の形につくって大きな机をみんなで囲む形が多くなりつつあります。カップル同士で喫茶店に行くとき、対面で食べるより、90°向かい合って食べるほうが親密度が上がるともいいますし、こういう形は食事が楽しそうな感じはします。ただカウンターの段差、冷蔵庫、レンジフードの問題はやっぱりどうにかして解決しなければいけません。
シンプルそうに見えるアイランドキッチンですが、使い勝手を考えるとなかなか難しいものです。ちゃんと設計されている場合はこれらのどれかになっている場合がほとんどです。それ以外の場合は、座面の高い椅子を使うとか、レンジフード無しにしてしまうとか、どこかやせ我慢してるんだなぁということですね。
当事務所で設計する場合は基本的にはやせ我慢しない形で考えます。お施主さまが「ミバ優先で!」と言われる場合には、もちろん喜んで対応させていただきます。