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【保存版】マンションリノベーションの実測調査チェックリスト

奈良市よりマンションリノベーションのご相談を頂き、現地調査に行って来ました。南向きのベランダから若草山もよく見える見晴らしのよい部屋です。

 

マンションリノベーションの調査や設計もかなりの数を積み重ねてきて、ずいぶん効率的に行えるようになってきたように思います。今まで痛い目に遭った経験で(温かいお施主様みなさまのおかげで事なきを得ていますが)、後々問題になりそうなポイントを事前に確認できるようになりました。昔はひたすら室内の寸法を測ったものですが、最近は構造や設備についてより詳しく調べるようになりました。

 

マンションはある程度定型があるので、戸建てほど想定外の事態は起こりませんが、それでも構造・設備のことをきちんと調べておかないと、思わぬところに小梁があったり、配管があったり、プランニングした通りの空間にならない場合が出てきます。逆に言うと、しっかり詳細な調査を行っておくほど、何が出来て何が出来ないのかが分かり、それだけシビアに設計することが可能になります。極端に言えば他のリフォーム会社が出来ないと言っていたことも、出来るようになるケースがあるということです。せっかくなので、リアルタイムに調査を進めながら最近どういった視点でマンションを見ているかご紹介しようと思います。

 

1.ユニットバス天井裏

マンションリノベーションの調査の基本です。ユニットバスの天井には必ず点検口があるので、そこから天井裏を覗きます。給排水・換気の経路の状態を確認しつつ、天井面の打放しコンクリートの状態も見ています。

 

2.サッシ周り

アルミサッシは基本的に入れ替えできないので、その高さが室内の床高さの基準となります(ぴったりあわせる必要はありませんが、サッシとの際の収まりに工夫が必要になります)。また、アルミサッシ周辺の部材の寸法を測ることでコンクリートや断熱材の厚みもある程度想定できます。

 

3.ドア周り

ドア前後の高さ関係も重要ですが、玄関では現状の仕上材が何であるか、も要チェックです。石やタイル仕上の場合は、つぶしてやり替えようとした場合にガガガガ・・・と非常に大きな騒音が発生します。今までの事例でも苦情率100%です。管理組合の許可を得ている以上は強行できなくはないのでしょうが、ご近所さんと険悪になっては大変です。「更の家」はご近所さんの都合に合わせて工期を延ばしタイル張替えに成功しましたが、「閑かな家」ではつぶすことをあきらめてタイルの上にモルタルを重ね塗りしています。「着替える家」は石の上にプラスチックタイルを貼りました。「吹き流しの家」は諦めてタイルをそのまま残すことになりました。なかなかのトラブルポイントなので、工務店も慎重になる箇所です。

 

4.換気口の位置・大きさ。

コンクリートには新たに穴を空けられないので、空調・給気・換気扇の出入口は既存の換気口を利用することになります。特に空調の配管ルートはマンションの新築時にうまく設計されていない場合も多いので、どういう風に変更すれば配管を隠せるか、設計の初期段階から頭の片隅に置いておく必要があります。「着替える家」は配管をルーバーで隠蔽しました。「閑かな家」は壁にメンテナンス可能なパイプスペースをつくってその中を通しています。「吹き流しの家」は1つの穴に2台のエアコン配管を通す離れ業です。

 

5.換気ダクトの出口

ベランダや廊下側から、どの位置にどんな大きさの開口があるのか確認します。室内から見えない天井裏の配管経路もある程度判断できます。

 

6.分電盤

マンションでは住戸あたりの電気容量が決まっているので、特に古いマンションではエアコンの設置台数に制限を受ける場合があります。火元をIHに出来るかどうか、も管理規約と照らし合わせつつ調査します。「引き算の家」はマンション全体の容量に余裕があったのでIHに変更できました。

 

7.インターフォン

古く黄ばんだマンションのインターフォン。もちろん交換したいところですが、大きなマンションでは火災警報器も兼ねているので、交換するのは非常にハードルが高く、大変です(私たちの事務所でも今まで一度も成功していません)。止む無く再利用することになるのですが、結構大きくて出っ張りもあるので、目立たずしかし使いやすい位置に計画する必要があります。事前にサイズや品番など調べておくと便利です。

 

8.ガス給湯器

今不具合がなくとも一般的に約10年が交換の目安なので、製造年が古いものは不動産会社さんの「まだ使えます」をあてにせず交換するほうが得策です。また、ユニットバスの追い炊き対応のある/なしも調べておかないと、着工後に思わぬ追加費用が必要になる場合もあります。

 

9.竣工図

実地の調査はもちろんですが、何と言っても重要なのは新築時の竣工図面です。マンションでは管理人室などに竣工図面や工事図面を保管している場合がほとんどなので、不動産会社や管理人さんにお願いして必ず調査しています。構造図を見ることで、柱・梁・床の正確な厚みを調べることが出来ます。また設備図を見ることで、配管ルートや管の大きさも一目瞭然です。実際の施工と図面が整合していない場合もあるのですが、それはそれで、結構図面どおり作られてないマンションだな、と認識しておくと色々と役にたちます。

上の写真は室内の排水ルートです。どんな太さの排水管がどこを通っているのか、よく分かりますね。

 

調査対象の住戸を調べるとともに、マンション全体がどういった設計意図でつくられているのか、出来上がるまでどんな出来事があったのか、知っておくことは非常に重要です。建設途中で計画が2転・3転している物件ではやはり設計に綻びが生じやすいですし、実地と図面が整合していないマンションは現場監理が行き届いていなかったということです。中古マンションの購入前にそういう問題点を指摘できるのは、我々一級建築士だけであろうと思います。

 

さて、ひととおり過去の物件を懐かしんだところで、今回のマンションは状態もよく、図面もきっちり正確で、全然問題ないことが分かりました。採取したデータを元にプランニングに取り掛かりましょう。