
更の家|回遊性メゾネットの更新
大阪府北部には建築家 遠藤剛生氏設計のマンションが点在しています。実験的なプランや丘陵地を巧みに利用した住棟構成が現在でも人気ですが、設備の老朽化と現行基準に比べて簡素な断熱性・防音性のため仕様の更新が課題となっています。今回の物件もそんなマンションの一室。階段を中心に回遊性のあるメゾネット住戸が組み合わさった特徴的な設計です。お施主様は長年愛着を持って住んでこられ、これからも住み続けたいとお考えではあるものの、住み方の変化と修繕の必要性からリノベーションを計画されました。新たに中古物件を購入する場合と違い、長年住み続けてきた住居のリノベーションでは部屋の配置や動線など使い慣れて変更したくない部分と、常々問題を感じてきた部分とが共存しており、対処療法的な設計が不可欠です。特に建築家が緻密に設計した共同住宅では間取りと構造体を切り離せない場合も多く、よく練られたプランニングは歳月を経ても色褪せない集住のかたちを含んでいます。 そこでスケルトン状態のゼロから考えるのではなく、先人が設計した従前の間取りを継承しつつ、更に発展させる、接ぎ木のようなリノベーションの形を提案しました。





エントランスホール。階段はカーペットから集成材踏み板に変更。フラットバーで手摺を新設。

窮屈だった壁付けキッチンは窓に面したコの字対面に変更して十分な作業環境を確保。

限られたスペースでも冷蔵庫を陰に隠すことでキッチン周りがシンプルに。

キッチンやカーテンは壁・フローリングとの相性が良いアースカラー。

内装はお手持ちの家具との相性を見極めつつ無垢フローリングと珪藻土で落ち着いたトーンに統一。

外壁面に発泡ウレタンを吹付け、開口部は内窓を設置して断熱性・気密性・防音性を向上。

書類・AV機器を納めた造作家具。

階高が2,550mmと極めてコンパクトなつくりのため、天井は貼らず間接照明のみでライティング。

天井裏スペースがないため、梁型に留めつけたチャンネル鋼に間接照明を仕込んでライティング。

間接照明下に既存家具をぴったり収納。

間接照明は調光器でいろいろなシチュエーションに対応。

階段よりエントランスを見下ろす。玄関横はシューズクローク。

テラスは大谷石と人工木材デッキ敷き。大規模修繕時には撤去できる設え。千里ならではの団地風景を借景に。
概要 計画/2014-2016 所在地/大阪府豊中市 用途/共同住宅 構造規模/鉄筋コンクリート造4F建てのうち2F・3F部分 坪単価対象面積/37坪[123m2]
協働 設計監理/山本嘉寛[YYAA] 施工/[松本工務店] 照明計画/石堂信吾[DAIKO大阪TACT] ファブリック/[fabricscape] 外構/松下岳生[soji] 撮影/山田圭司郎[YFT,]
外部仕様 開口部/ビル用アルミサッシ[YKK]・内窓[LIXIL] 【テラス】床/大谷石・人工木材デッキ
内部仕様 【玄関】天井・壁/珪藻土ペイント[四国化成] 床/磁器質タイル[LIXIL] 【LDK・予備室・廊下】天井・壁/珪藻土ペイント[四国化成] 床/オーク複合フローリングOF[Nissin-EX] 【納戸】天井・壁/ビニルクロス[サンゲツ] 床/オーク複合フローリング[Nissin-EX] 【洗面室・トイレ2】天井・壁/ビニルクロス[サンゲツ] 床/長尺シート[東リ] 【トイレ1】天井/ビニルクロス[サンゲツ] 壁/ビニルクロス[サンゲツ]・珪藻土ペイント[四国化成] 床/長尺シート[東リ] 【寝室2・廊下2】天井・壁/ビニルクロス[サンゲツ] 床/コルクタイル[東亜コルク] 【寝室1】天井・壁/ビニルクロス[サンゲツ] 床/既存 【浴室】UB[タカラスタンダード] 【キッチン】[藤屋/Euromobil] 【内部建具】合板フラッシュオレフィンシート貼・スプルースOP
設備仕様 【給排水】給水/水道直結 給湯/ガス給湯器 排水/下水道放流 【換気空調】換気/第3種換気方式 空調/ルームエアコン 【電気】[DAIKO][KOIZUMI][Panasonic]