住まいの維持管理:住まいのリフォーム①

突然ですが、大阪府建築士会の関係で、2021年10月31日(土)に天六にある大阪市立住まい情報センター(いわゆる住情センター)でお話させて頂くことになりました。お題は「住まいの維持管理:住まいのリフォーム」です。内容は【住み慣れた家を維持管理しつつ長く住み続けるためのリフォームや、空き家のリノベーションの進め方やポイント、事業者選びや様々な支援制度など、事例をまじえて解説します。】ということなので、私たちの事務所にはぴったりなのですが、話すべき内容がてんこ盛りです。しかも2時間の長丁場。これは念入りな準備が必要です。せっかくなので、ブログ記事にまとめながら、セミナーの内容を整理していこうと思いたちました。

まずは住まいのリフォーム・リノベーションを類型化してみたいと思います。
色々な建築に色々な住み方がありますが、荒っぽく分けてみると、

■戸建住宅か、集合住宅か
■自己用か、事業用か

という2つの分岐があることが分かります。同じ戸建住宅でも自己用と事業用では目的も予算も異なりますし、同じ自己用建築でも、戸建て住宅と集合住宅では可能なこと・不可能なことが大きく異なります。私たちの事例でこの2x2=4パターンの分類を行ってみました。

A. 戸建住宅|自己用

砕石,,焼杉,古民家・町家,
一戸建て住宅リノベーション・古民家耐震改修の施工事例|愛でる家【山本嘉寛建築設計事務所YYAA】大阪・奈良・京都|建築家
大和郡山の家|一戸建て住宅リノベーションの施工事例|山本嘉寛建築設計事務所YYAA【大阪上本町・奈良】建築家・作品集

B.戸建住宅|事業用(長屋も戸建扱いとしました)

昭和小路の長屋II|賃貸向け京町家のリノベーション
借家の家|賃貸戸建て住宅リノベーションの施工事例|山本嘉寛建築設計事務所YYAA【大阪上本町・奈良】建築家・作品集

C. 集合住宅|自己用

ナラ(無塗装),
引き算の家|マンションリノベーションの施工事例|山本嘉寛建築設計事務所YYAA【大阪上本町・奈良】建築家・作品集
マンションリノベーションの施工事例|更の家【山本嘉寛建築設計事務所YYAA】大阪・奈良・京都|建築家|作品集
吹き流しの家|マンションリノベーションの施工事例|山本嘉寛建築設計事務所YYAA【大阪上本町・奈良】建築家・作品集
着替える家|気分によって簡単に間取りを替えられるマンションリノベーション

D. 集合住宅|事業用

Dias201 | 大きなカウンターのある賃貸マンションリノベーション
Dias201 | カーテンで軽やかに住む賃貸マンションリノベーション
しかくの部屋|設備が詰まった箱がぽつんと置かれた部屋

各ジャンルとも、割とまんべんなく設計させて頂いていることが改めて分かります。ご依頼頂きました皆様に御礼申し上げます。次回から、この4つの要素とリノベーションとの関係について考えたいと思います。(注:不定期更新です)

【保存版】マンションリノベーションの実測調査チェックリスト

奈良市よりマンションリノベーションのご相談を頂き、現地調査に行って来ました。南向きのベランダから若草山もよく見える見晴らしのよい部屋です。

 

マンションリノベーションの調査や設計もかなりの数を積み重ねてきて、ずいぶん効率的に行えるようになってきたように思います。今まで痛い目に遭った経験で(温かいお施主様みなさまのおかげで事なきを得ていますが)、後々問題になりそうなポイントを事前に確認できるようになりました。昔はひたすら室内の寸法を測ったものですが、最近は構造や設備についてより詳しく調べるようになりました。

 

マンションはある程度定型があるので、戸建てほど想定外の事態は起こりませんが、それでも構造・設備のことをきちんと調べておかないと、思わぬところに小梁があったり、配管があったり、プランニングした通りの空間にならない場合が出てきます。逆に言うと、しっかり詳細な調査を行っておくほど、何が出来て何が出来ないのかが分かり、それだけシビアに設計することが可能になります。極端に言えば他のリフォーム会社が出来ないと言っていたことも、出来るようになるケースがあるということです。せっかくなので、リアルタイムに調査を進めながら最近どういった視点でマンションを見ているかご紹介しようと思います。

 

1.ユニットバス天井裏

マンションリノベーションの調査の基本です。ユニットバスの天井には必ず点検口があるので、そこから天井裏を覗きます。給排水・換気の経路の状態を確認しつつ、天井面の打放しコンクリートの状態も見ています。

 

2.サッシ周り

アルミサッシは基本的に入れ替えできないので、その高さが室内の床高さの基準となります(ぴったりあわせる必要はありませんが、サッシとの際の収まりに工夫が必要になります)。また、アルミサッシ周辺の部材の寸法を測ることでコンクリートや断熱材の厚みもある程度想定できます。

 

3.ドア周り

ドア前後の高さ関係も重要ですが、玄関では現状の仕上材が何であるか、も要チェックです。石やタイル仕上の場合は、つぶしてやり替えようとした場合にガガガガ・・・と非常に大きな騒音が発生します。今までの事例でも苦情率100%です。管理組合の許可を得ている以上は強行できなくはないのでしょうが、ご近所さんと険悪になっては大変です。「更の家」はご近所さんの都合に合わせて工期を延ばしタイル張替えに成功しましたが、「閑かな家」ではつぶすことをあきらめてタイルの上にモルタルを重ね塗りしています。「着替える家」は石の上にプラスチックタイルを貼りました。「吹き流しの家」は諦めてタイルをそのまま残すことになりました。なかなかのトラブルポイントなので、工務店も慎重になる箇所です。

 

4.換気口の位置・大きさ。

コンクリートには新たに穴を空けられないので、空調・給気・換気扇の出入口は既存の換気口を利用することになります。特に空調の配管ルートはマンションの新築時にうまく設計されていない場合も多いので、どういう風に変更すれば配管を隠せるか、設計の初期段階から頭の片隅に置いておく必要があります。「着替える家」は配管をルーバーで隠蔽しました。「閑かな家」は壁にメンテナンス可能なパイプスペースをつくってその中を通しています。「吹き流しの家」は1つの穴に2台のエアコン配管を通す離れ業です。

 

5.換気ダクトの出口

ベランダや廊下側から、どの位置にどんな大きさの開口があるのか確認します。室内から見えない天井裏の配管経路もある程度判断できます。

 

6.分電盤

マンションでは住戸あたりの電気容量が決まっているので、特に古いマンションではエアコンの設置台数に制限を受ける場合があります。火元をIHに出来るかどうか、も管理規約と照らし合わせつつ調査します。「引き算の家」はマンション全体の容量に余裕があったのでIHに変更できました。

 

7.インターフォン

古く黄ばんだマンションのインターフォン。もちろん交換したいところですが、大きなマンションでは火災警報器も兼ねているので、交換するのは非常にハードルが高く、大変です(私たちの事務所でも今まで一度も成功していません)。止む無く再利用することになるのですが、結構大きくて出っ張りもあるので、目立たずしかし使いやすい位置に計画する必要があります。事前にサイズや品番など調べておくと便利です。

 

8.ガス給湯器

今不具合がなくとも一般的に約10年が交換の目安なので、製造年が古いものは不動産会社さんの「まだ使えます」をあてにせず交換するほうが得策です。また、ユニットバスの追い炊き対応のある/なしも調べておかないと、着工後に思わぬ追加費用が必要になる場合もあります。

 

9.竣工図

実地の調査はもちろんですが、何と言っても重要なのは新築時の竣工図面です。マンションでは管理人室などに竣工図面や工事図面を保管している場合がほとんどなので、不動産会社や管理人さんにお願いして必ず調査しています。構造図を見ることで、柱・梁・床の正確な厚みを調べることが出来ます。また設備図を見ることで、配管ルートや管の大きさも一目瞭然です。実際の施工と図面が整合していない場合もあるのですが、それはそれで、結構図面どおり作られてないマンションだな、と認識しておくと色々と役にたちます。

上の写真は室内の排水ルートです。どんな太さの排水管がどこを通っているのか、よく分かりますね。

 

調査対象の住戸を調べるとともに、マンション全体がどういった設計意図でつくられているのか、出来上がるまでどんな出来事があったのか、知っておくことは非常に重要です。建設途中で計画が2転・3転している物件ではやはり設計に綻びが生じやすいですし、実地と図面が整合していないマンションは現場監理が行き届いていなかったということです。中古マンションの購入前にそういう問題点を指摘できるのは、我々一級建築士だけであろうと思います。

 

さて、ひととおり過去の物件を懐かしんだところで、今回のマンションは状態もよく、図面もきっちり正確で、全然問題ないことが分かりました。採取したデータを元にプランニングに取り掛かりましょう。

 

 

フランネルソファの展示会


南船場で行われたフランネルソファの展示会に伺いました。今設計中の住宅で採用検討しています。フランネルソファは名古屋の家具メーカーで大阪にはショールームがないのですが、以前の物件でもお施主様からお問い合わせを頂いたことがあり、今日の展示会も長蛇の列でした。人気ですね。

特殊なデザインではないので和にも洋にも使いやすく、寸法も海外製ソファより一まわり小ぶり、値段もめちゃくちゃ高くないという辺りが人気の秘密でしょうか。

気になったのがこちらの超ローソファ。無垢フローリングの床は非常に気持ちがよいので、こういったローソファと組み合わせて半床座の生活もなかなか快適そうです。生活する目線の高さはリビングテーブルやダイニングとの関係性もあり、なかなか奥が深いです。

sonihouseさんの12面体スピーカー

リビングに検討中のスピーカーを視聴するため、奈良市にあるsonihouseさんへ伺いました。

 

ソファに座ってスピーカーの響きを視聴させて頂きました。細部までくっきり聴こえるスピーカーから流れる音に聞き耳を立てていると、普段は分からないような演奏者の息遣いやノイズが次第に浮かび上がってきます。照明のない真っ暗な山奥で夜星を眺める感覚に近いでしょうか。最近はmp3のスカスカ音楽にすっかり馴染んでしまっているので、何だか心が洗われるような体験でした。

住宅の音響設計では、スピーカーを置く位置や台数、床への接し方、室内の床・壁・天井仕上げにシビアな注文が出ることが多く、さらに室内のある一箇所で聞くとベストに聞こえる、というセッティングを目指すことが当たり前になっているように思います。しかし実際、家全体を音響に最適化した建材でくるむことはほぼ不可能ですし、建物の中で人間は動き回りますので、じっと一箇所に座っている時だけ実力を発揮する音響設備ではいくら音が良くても生活の一部分にはなりません。

その点、このスピーカーのような無指向性のスピーカー(多面体の各面から音が放出される)は、空間全体に音を届けられる仕組みによって(もちろんベストな立ち位置はありますが)片側のスピーカーに近づいたり、遠くに離れてみたりしても急にバランスが崩れることがなく、音楽が人間の生活に無理のない形で寄り添ってくるような幸せな関係性があって、住空間には大変適しているように思われました。

 

ちなみにsonihouseさんの外観。なんだか料理屋のような佇まい。聞けばなるほど、お寿司屋さんだった建物をリノベしているそうです。和な感じは割り切ってそのまま残しているのが今時ですね。

ポーターズペイントのショールーム


ポーターズペイントはオーストラリア生まれのちょっと変わった塗料です。堺の現場の帰りに、ショールームに伺いました。


なんとなく漂う「日本のじゃない感」。塗りムラや微妙な色の具合がちょうど気持ち良い感じです。

サビサビのポストは、中身はいたって普通。外部だけ錆塗装しています。錆色塗装は最近我が国でも増えていますが、金属粉が混ざっていてリアルに錆びます、という商品はなかなかないですね。外部で使えるシリーズが多いのも嬉しいところ。是非一度使ってみたいものです。

溶融亜鉛メッキ工場の見学

建築士会の勉強会で溶融亜鉛メッキの工場へ見学に行ってきました。

 


溶融亜鉛メッキとは、鉄製品の錆の劣化を防ぐために表面を亜鉛でコーティングする技術のことで、「スパングル」と呼ばれる色むら模様が特徴です。

 

(亜鉛鍍金工業会資料より)

およそ400℃に溶かされた亜鉛の窯に鉄を浸けてメッキ処理を行う様子はさながら巨大なチーズフォンデュのようで、これだけ大きな具材で出来たらなー。と妄想しながら見学していました(笑)

 

メッキ処理に至るまでに様々な下処理と検査の工程があり、何気ない部材の一つにも多くの人の手間と労力が掛かる事を実感できて、とても勉強になりました。見学させて頂いた工場の皆さま、ありがとうございました。

 

ユーロモービルのリニューアルパーティ

ユーロモービル大阪ショールームのリニューアルパーティにお邪魔しました。おもてなしカウンターもキッチン!格好いいキッチンはとても絵になります。

 

奥のほうにあるキッチンでは、プロの方が調理したお料理が振る舞われました。ショールームのキッチンは普通ガスや給排水の配管は接続されていないのですが、今回はお施主様に使い勝手を体験してもらうことと、ショールームでセミナーや料理教室も行えるように、本当に使えるキッチンとして据えつけたそうです。実際に機器を使って料理をしているところを見ると「あのオーブンを買って、私も家で美味しい料理をつくりたい…!」という気持ちになりますね。お料理もとても美味しかったです!

設計関係者だけでなく、キッチン設備関係のメーカーの方からお施主様まで、とてもいろんな方が参加されていました。きれいなキッチンと美味しいお料理に、おなかも心もいっぱいになりました。

風呂リモコン位置はどこが良いでしょう?

よくある洗面室+ユニットバスの間取りです。

通常、お風呂の追い炊きやお湯の温度調節のために、浴室内の壁面に「風呂リモコン」を設置しますが、最も適切な位置はどこでしょうか。

施工業者さんに何も指定しなければ、上図の①か②の位置になります。風呂の中だけの操作であればそれほど問題はありません。強いて言えば、②は入浴しながらリモコンを見つめ続けなければいけないので、①のほうが優れているかもしれません。

しかし、実際の生活で風呂リモコンを操作したいタイミングは入浴中だけではありません。洗面室でお湯を使いたい場合もかなりの割合を占めています。①②では、洗面室でお湯を使いたい時に浴室内に足を踏み入れてスイッチを入れなければなりません。最近はユニットバスの床材も改良され、乾燥しやすい素材が増えてきましたが、夜遅くに入浴して次の朝に洗面室を使う場合などには完全に床が乾ききっていない場合も多く、風呂リモコンのスイッチを入れる度に足の裏が濡れてしまう経験をされた方は多いのではないでしょうか。(でなければ、きちんと毎回ゴム靴を履いておられることでしょう)。

入浴中に操作しなければならないため浴室内には必要ですが、なおかつ洗面室からも足を踏み入れなくても操作できる位置がベスト。そういう訳で、私たちの事務所では③の位置を推奨しています。扉の近くに設置すれば、浴槽に入った時の後頭部とも干渉しませんし、視界からリモコンが消えることで①よりさらに浴室内がすっきり見えるメリットもあります。

奈良の木 助成制度など

山本嘉寛建蓄設計事務所は平成29年度も引き続き、奈良県産材の利用を促進する「奈良の木」事業者として登録されております。・・・ということで、奈良の木を使用した住宅への助成制度の説明会に行って来ました。

以前の物件で、助成金申請にあれこれ手を尽くしたものの僅かな条件の不整合で獲得できなかった経緯があり、この助成金についてはかなり慎重に構えております。吉野杉を使えば助成金がもらえる!!と一見簡単そうに思えるんですが、色々ハードルが高いのです。

例えば建物の外壁には適用されません。住宅では外壁を焼杉貼にしたい案件はとても多いのに大変残念なことです(内装に使うより外装に使うほうが、ずっと多くの人に奈良県産材をアピールできるのに何故ダメなのでしょう)。また、原則的に最新の建築基準法を遵守した建物が対象のため、戸建てのリノベーションではその多くが対象外となっています。

古い建物では現行の建築基準法に合致していないものも多く(既存不適格)、建築基準法の成立以前に建設された町屋・古民家では確認申請の手続き自体を行っていません。つまり、新築木造住宅に主眼をおいた助成金なのです。これだけ空き家問題が取り沙汰され、古い建物を活かしていきましょう、という時代に、木造新築住宅に特化したキャンペーンを行う奈良県の姿勢には疑問を感じざるをえません。説明会でも質問を投げかけてみたのですが、全然響かなかったようでした。

耐震診断・耐震補強の助成金についても言えることですが、お役所が助成金を出すためには、対象建物が全く潔白な建物でなければいけません。建築基準法的にグレーな建物に助成金を出すと色々マズいことが起こりかねないからです。新築では最新の建築基準法によって確認申請を受けますので何も問題は起こりません。しかし、古い建物では、過去の時点での建築基準法で確認申請を受けているため、現在とは異なる基準で建物が成り立っています。また、長年生活をする上で駐車場に屋根をつけたり、子ども部屋を増築したり、という増改築を行っているケースもたくさんあります。明らかに違法状態の建物は論外ですが、本当に助成すべきは幾多の歴史をくぐり抜けてきて、さらにこれから使い続けていこうというお施主さまに恵まれた幸運な建築たちではないか、と思います。

そして今日の助成制度の説明会は県の担当者が書類を棒読みして終わり。いやはや、実に無駄な時間を過ごしました。

無垢フローリングのショールーム

梅田スカイビル。現在進行中のプロジェクトの木材検討に、無垢フローリング.COMさんのショールームに行って来ました。インターネット販売系では、ショールームを持っているメーカーさんは稀です。実際の貼見本を見ると、小さなサンプルでは分からない全体の印象も比較することが出来て大変参考になりました。

国産自然塗料、U-oilの超カラフルな塗り見本。これだけ種類があると微妙な色味の調整もできますね。青や紫はなかなか実際使う機会がありませんが・・・。

中古住宅インスペクター

際限なく増える空き家と建売住宅。一向に大きくならない中古住宅市場。我が国の歪んだ不動産市場の原因の一つは中古物件を購入する際のリスクが高すぎることにあります。売主や仲介業者から「まあ、大丈夫でしょう」と言われても、果たしてどこまで信用してよいものやら。新築では施工者の責任が問われる構造や雨漏りの瑕疵も、中古住宅では「現況優先」を盾に責任を負わすことが難しい。そういう状況を少しでも改善しよう、ということで数年前から注目されているのが「インスぺクション」です。

 

日本語では「購入前診断」などと言われますが、中古物件(マンション含む)を購入する際、売買契約の前に第三者である専門家が現況を調査し、建物のありのままを依頼主に報告する仕組みです。

 

良いもの建てて蓄えよう、がキャッチフレーズ?な当事務所ではリノベーションの案件も多く、以前よりこの仕組みに着目していましたが、ようやく講習など手続きを受けて、「国土交通省インスペクションガイドライン準拠・建築士会インスペクター」に登録することができました。

 

今までも中古物件のご相談では建物の状況を拝見して、床下やら天井点検口やらを覗いては状況をお施主様にお伝えしていましたが、もう一歩踏み込んで、家全体を調べてオフィシャルな報告書としてご提示することが可能になりました。

 

インスペクションの一般への認知度は30%程度ということですので、まだまだ単体で業務として行うケースは少ないと思いますが、戸建・マンションリノベーションでは物件選びの際の一つの判断基準として使って頂けるのではないかと思っています。

3Dプリンタ住宅模型

事務所に3Dプリンタを用いた建築模型の営業に来られました。イマドキ技術に興味津々・・・。当事務所でも、お施主様から模型が欲しいとご要望を頂くことは多いのですが、説明用・撮影用としてつくっているため見た目優先、華奢で耐久性がないに等しく、今までは差し上げることができませんでした。3Dプリンタ模型は石膏の一種で作るそうで、なかなか強度があります(触っても大丈夫です)。これなら、ご希望の方にオプションとしてお渡しすることも出来そう。
(※ しかしなかなかのお値段です。)

DIYからDIMへ

近頃DIYという用語もすっかり身近なものになりました。雑誌・TVで特集が組まれ、ホームセンターの折込チラシには必ずといって良いほどこの用語が踊っています。「自分でできることはプロに頼まず自分でやってみましょう。」「出来は多少悪くても自分だけが使うので問題ありません。」「ちょっとした工作も楽しいですよ。」「おまけにコストも大幅に圧縮できてお得です。」という誰もが納得の触れ込みですが、では果たしてDIYによって、多くの方々が創造力を発揮し、身近なものづくりにチャレンジする社会が到来したのでしょうか。
DIYとは皆様御存知の通り、Do It Yourself. の頭文字です。一見何の問題もなさそうですが、少し立ち止まって考えてみると、「自分」に対してmyselfではなくyourselfが与えられていることに気が付きます。つまり、自分で出来ることは自分でやろうぜ、と呼びかける「私」が居て、その呼びかけに応えて工事を行う「あなた」が居る。メディアやホームセンター、家具量販店である「私」が、「これとこれを買えば手軽につくれますよ。」「このパッケージに入った部材を組み立てれば出来上がりますよ。」と「あなた」を誘導し、組立費をコストダウンしながら商品に付加価値を与える実に巧みな販売戦略であるということが分かります。
一方で、ごく一部のクリエイター層にはすっかり浸透した「セルフリノベーション」という用語があります。だれも買わないような中古の不良物件に価値を見出して、自分たちの力で好きなように改造する。誰から頼まれた訳でもないので、そこにはmyもyourもありません。ゼロの状態から新しい空間を創造する魅力がある一方、完成形が見えないものづくりは苦難の連続です。私のような設計を生業とする者ですら二度とやりたくないと思うのですから、一般の方々にとって非常にハードルが高い行為であることは間違いありません。
この極端な2つのムーブメントをもう少し緩やかに結びつける何かを作れないか、という事は、私が独立して以来ずっと考え続けているテーマです。DIYは手軽である反面、あらかじめ完成形が定まっているために作り手の創造力が刺激されません。セルフリノベーションは思う存分創造力を発揮できますが、身を捧げる程の覚悟がないと踏み込めません。作り手の創造力を刺激しながら、手軽なツールとして用いることができる何か。DIYをDIM (Do it myself) に換えられる何かを作れないか、少しずつですが試行錯誤を行っています。

アレルギーと住まい

先日、住宅のアレルギー対策について文章の依頼を頂きました。シックハウスやハウスダストといった言葉もすっかり浸透し、住環境が体に何らかの影響を与えるという事もここ10年ほどですっかり常識となりました。


ただ、(特に大人の)アレルギー疾患はたくさんの要因が複合的に関係して起こります。住宅に使う建材も確かに要因の1つですが、揮発性有機化合物(VOC)を含まない建材のみで住宅を作ったからといって、即その日からアレルギーが無くなる訳では決してありません。建材でアレルギーが解決するというのは単なる神話であり、マスコミや建材メーカーの妄言です。


建材のVOC含有量は建築基準法に定められた基準値がありますが、そこに置く家具や什器については特に基準がありません。過敏な方なら、電化製品から発散される微量の化学物質からでも影響を受ける可能性がありますが、現代では完全にVOCを払拭した生活を実現することはほとんど不可能です(有機栽培の野菜といっても、100%化学物質を含まないものを望めば、土壌や水、果ては空気まで拘る必要があるのと同じです)。従って、どのレベルまで許容するのか・制限するのか、という線引きが必要になりますが、もしお困りの方が「VOCが原因でアレルギーになっている」と固く思い込んでいれば、(もし実際に影響が微量でも)それがストレッサーとなってアレルギーを誘引するため実に厄介です。完璧・潔癖主義に対しては精神面のケアが避けて通れません。


また、住まいのアレルギー対策としてはVOC含有量に目を向けると同時に、生活習慣をいかに改善するか、という視点も必要です。自律神経の働きがアレルギーに大きな影響を及ぼすことはよく知られていますが、日の当たらない部屋の中で一日中篭った生活を送っていると自律神経の働きに狂いが生じ、アレルギーや不眠症の要因となります。寝室やダイニングに自然光、特に朝日を十分に取り入れることができる設計を行い自立神経の調整を助けることも、見落としがちですが我々が手助けできる重要なアレルギー対策の一つです。

施主工事のメリット・デメリット


雑誌やTVの番組では、建主が工事に参加する「施主工事」の場面が多くみられます。普段建築工事にかかわったことがない方にとっては貴重な体験ができる機会。自分で自分の住まいをつくることで愛着も生まれ、おまけに工事費も安くなりそう。
・・・ですが現実的には、施主工事にはよって様々なリスクやデメリットが発生します。何となく自分で出来そうだから施主工事を選んだものの、思いのほか大変だし時間もかかってしまった、結局はじめから職人に任せたほうがよかったなあ、という事になっては本末転倒です。施主工事の採用にあたっては、様々な危険性を考慮する必要があります。
1.資材費・工具費がかかる
施主工事としても、材料は購入しなければなりません。従って正味費用がゼロになる訳ではありません(例えばペンキ塗りをするためには、ペンキ自体を購入しなければなりません)。また、専門の工具をお持ちでない場合は新規で購入する必要があります(ペンキ塗りなら、バット、ローラー、刷毛、マスキングテープ、作業服、靴・・・)。
2.傷・汚れ
施主支給と同様、施主工事についても、本工事を行う工務店との責任負担が曖昧になりがちです。特に多いのが傷や汚れについての問題。施主工事では現場作業に慣れない素人が工事を行うため、うっかり他の綺麗に仕上がった箇所を傷つけたり、汚したりしてしまう事があります。建主が工務店に弁償しなければならない事態に陥ってしまっては元も子もありません。そのため、多くの工務店では本工事の内容が完成して引渡が終わってからでないと施主工事はNG、と考えます。
3.時間がかかる
施主工事では、一つ一つの作業にプロの職人と比べて数倍~数十倍の時間を必要とします。本工事の完成前に施主工事を行う場合は、その完成を待ってから他の工程を行うことになり、全体の工程に遅れを生じれば現場管理を行っている工務店の経費負担が問題になります。また本工事終了後に施主工事を行う場合は、なかなか作業が進まず建築が完成したのに引越しを行えなかったり、引っ越してから工事も始めて、工事現場に住むような状況も多く見かけられます。
4.危険性
建築現場は様々な危険に満ちた場所です。資材の角で怪我をしたり高所から落下する可能性は絶えずつきまといます。また、リフォームなど古い建物の解体を施主工事で行う場合は、アスベストの含まれた建材を知らず知らずのうちに吸い込み・触ってしまう危険性があります(築30年超の建物では吹付でなくとも建材の中にごく普通にアスベストが含まれています)。
お施主さまの中には建設関係のお仕事をされていたり、大工工事や給排水・空調・電気工事の技能を有している方もおられます。そういう場合はまとまった減額が可能となりメリットも大きくなります。しかし一般的なDIYの範疇で施主工事を行う場合は、上記の様々なリスクが生じるため、一概にお得にはなるとは限りません。
ただ、「自分の家を自分の家をつくってみる」という考え方は、何にも代えがたいメリットです。昨今では災害時に自分独りでどういう建築工事を行うことができるのか、サバイバルの一環として基本的な建築技能を身につけておく必要性も高まっています。インパクトドライバーや丸ノコを使った大工工事、給排水配管工事程度は少し練習すればそれなりに体得できます。施主工事を行うことで、ブラックボックスだった「建築工事」を身近に感じられるようになるなら、それだけでも十分値打ちはあるのではないか、と思います。

施主支給とは。

建築費を削減する方法はいろいろありますが、素材や仕様そのままに経費を削減する手段として、「施主支給」があります。通常は工務店が卸業者から仕入れる資材を施主(=建主)が別ルートで購入して現場に納入し、取付工事のみを工務店に依頼する手法です。

ある建材について、見積計上されている仕入値が高かった場合、建主がネットショップなどで激安価格の建材を購入して現場に納入すれば、その差額分だけ工事費を減額することができます。また、工務店の経費は全体の工事金額に応じた掛け率で決まってくるため、本工事から資材の分を除外すればその分の経費が無くなる、という考え方も出来ます。

今日では一般の方でも簡単にインターネットで建材を購入することができますので、商品を探す手間さえ惜しまなければ、工務店経由に比べて安い価格で資材を仕入れる事はそれ程難しいことではありません。特に照明器具や家具、カーテンなど単体の建材については施主支給は非常にメリットがある手法です。しかし一方で、工事と密接に関係する資材や設備については施主支給によるデメリットも考慮する必要があります。

1.ローンに含めにくい・・・施主支給扱いにより本工事の契約金額は下がりますが、契約に含めないということは通常、ローンに組み込むことはできません。融資先の審査にもよりますが、基本的には直接代金を支払う必要性が生じます。従って、施主支給が大きくなるほど、現金での負担が大きくなります。

2.現場納入時期の調整が難しい・・・建築工事では通常、現場の進捗に応じて工務店が順番に必要な資材を発注します。工程管理は請負業者の大事な業務の一つです。しかし施主支給の場合は、建主自身がメーカーや卸業者、現場監督と綿密に打合せして、いつ何を現場に納入すればよいのか調整する必要があります。ネットショップ等から資材を注文する場合は、納入日が予定より一日ずれてしまった、という事もしばしば起こります。しかしその日の取付けのためにやってきた職人が仕事を出来ず、もう一日余計に段取りするような事態になれば、余計に1日分の人件費(職人1人3万程度)を支払わねばならない事になってしまいます。さらにその遅れが他の工程に影響を及ぼす可能性もゼロではありません。

3.必要な部材の選定が難しい・・・建材や設備機器の中には、商品自体の他にビスや配管、配線など、付属部材が必要になるものがあります。建主が直接部材を取り寄せる場合は、それらの付属部材についても 過不足なく仕入れる必要があるため、商品やその取付方法についての知識が必要となります。

4.責任が曖昧・・・例えば水栓を施主支給し、それを工務店が組み立たとして 数年後に水漏れを起こった場合を考えます。水栓自体の不良が原因なのか、 取付工事に問題があったのかをはっきりさせることは非常に困難です。 工務店が発注した物品であれば、機器・工事どちらに問題があったとしても、 工務店が請負業者として責任を持ってメンテナンスする義務が生じますが、 施主支給が絡んだものについては責任外ということになってしまいます。


5.工務店の理解が必要
・・・工務店は資材と人件費について経費を計上することで利益を生み出しています。その中の資材の分を切り離すことは工務店にとってメリットがある話ではありません。また専門家でない方が現場に介在することで、むしろ通常の業務に比べて余計な労力が発生する場合が多く、上記4の問題もできれば避けたいところです。そのため、工務店によっては施主工事NG、という考え方の業者も存在します。

このように施主支給が増えれば増えるほど現場との蜜な連携が必要となります。建築業界にかなり明るい方でなければメリットよりもデメリットのほうが大きくなってしまう可能性が十分あります。結局最初から工務店に頼めばよかった、ということになっては本末転倒です。そのため当所では、ケースに応じて商品の調達や現場納入時期の調整についてサポートする業務を行っています。

本当は施主支給無しで全ての工事を行えればベストですが、リスク覚悟で削れるところは少しでも削って、出来る限り希望を叶えたいというお施主さまがほとんど。特に関西の皆様の厳しい金銭感覚をクリアするには、なりふり構わぬ工夫が必要です。

中古住宅のインスペクション


中古住宅のリノベをお考えの施主さまと、検討中の物件を調査に。いわゆるホームインスペクションです。(⇒ホームインスペクションについてはこちら等を参照)

クラック発見。売主からは何の説明もなく、危うく見過ごされるところでした。

ユニットバスの天井から、屋根裏をごそごそ拝見。断熱材の留め付けが甘いですねえ。
中古物件を購入する際は、ふつう不動産会社と買主との直接交渉になりますが、不動産会社はプロ・買主は素人ですから、買主が著しく不利な交渉となってしまい、売主が言っていることがどこまで正しいのか判断することもできません。そこで、不動産会社よりはるかに建築に詳しい我々、設計を生業とする一級建築士が買主の立場に立って物件の現状を調査・査定する必要がある訳です。特にリノベーション前提の購入の場合は、契約前に希望のプランが叶えられそうなものか、ある程度当りをつけることは大変重要です。
なぜか関西では広がらないホーム・インスペクションですが、潜在的な需要はメチャメチャあるように感じます。弊所でも、もっとたくさんの方が安心して中古住宅を購入できるよう、物件の購入前の段階からお手伝いできる仕組みを検討中です。

建物調査の力強い味方。赤外線測定器

芦屋のリノベ計画。プラン作成にあたり内部の実測を行いました。夏場、エアコンが効かない室内での作業はなかなか骨が折れますが、最近では強力な助っ人のおかげでかなり楽になりました。画面右に写っているヤツです。赤外線測定器。ピッと押せばレーザーでたちどころに向かいの壁面までの距離を測定してくれます。精度もミリ単位。壁の微妙な不陸まで出ます。測定器から出る光はそれほど強くないので、太陽光の下ではかき消されてしまうことが唯一の難点ですが、室内の高い天井や長い距離の測定には大助かりです。 リフォームではアバウトな図面だけでもある程度現場任せで出来上がっていくのですが、高い精度を出そうとすると、やはりそれなりの準備が必要です。