戦前に建てられたニコイチ借家の片側だけを改修して、若いご家族の住まいにリノベーションする計画。

草臥の家

戦前に建てられたニコイチ借家の片側だけを改修して、若いご家族の住まいにリノベーションする計画。

俯瞰。戦前の民家や昭和レトロな商店が残る街並み。交通至便で特別な法規制もないため、ハウスメーカーの住宅と賃貸マンションへの建て替えが進む。

敷地北側は設計当初空地だったが、計画を進める間にミニ開発されて全て太陽光パネルの載った住宅になった。

同時期に建てられた5軒のニコイチ長屋。各々の持ち主によりアレンジを加えられつつ4軒は現存するが傷みが目立つ。1軒は既に2区画の住宅に建て替えられている。

北面から見下ろし。朽ちかけた高塀を撤去して庭を拡張。大屋根は劣化した瓦と土を撤去し、お隣と高さを調整しながら葺き直し。樋も排水ルートを見直して半分だけ更新。

1階は漆喰塗り。2階はお隣と板幅や押え縁の間隔を揃えて製作した焼杉貼り。

足元が朽ちて危険な塀を撤去して、開放的なアプローチに変更。

正面。左手の駐車場は舗装せずダイゴンドラ種子撒き。右手は四つ目垣で緩く仕切って街並みにも緑が溢れるように。シンボルツリーは橘。

既存の意匠を踏襲しながらペアガラス化したおたふく窓。奥の庭まで視界が抜ける。

右手の入口は納戸を兼ねた家族玄関。

玄関と下屋は一度解体してベタ基礎を打ち、状態の悪い部材を更新しながら組み直して耐震補強。鬼瓦はクリーニングして再利用。

巣箱のイメージで作った一本足のポスト(伝書箱)。表札・インターフォン兼用。

周りの田畑は消えつつあるが、敷地の南向かいは生産緑地のため建物が建ちにくく、長閑な住環境が保たれている。

一度解体して組み直した玄関。建具も傷みの激しい箇所を補修して再利用。

玄関見返し。天井は張らず野地板表しに変更。*

居間。構造補強・断熱補強を施しながら洋間+和室を大きなワンルームに更新。

キッチンは間取りに合わせて変則的なL型ペニンシュラで製作。玄関から居間、庭まで見渡せるレイアウト。

キッチンから玄関・リビングを見る。新しい間取りに合わせて柱を盛り替え。2階の荒板は一度全て剥がして美装し、不陸を調整して貼り直し。その上に構造用合板で補強。

ダイニングから玄関方向。床はチェリー。キッチン面材はサペリ。濃い古材と白い新設材を中間色で取り持つ。

キッチンの内側と外側で二重の回遊性を設けて収納や家事動線の自由度が高い間取り。

リビング〜縁側〜庭のつながり。縁側は物干場兼用。張り出した部分は洗面・浴室。

キッチン裏の回遊家事動線から。

納戸を兼ねた土間の家族玄関。解体時に発見された井戸を整備して散水に活用。*

たくさんの蔵書のため階段周りに本棚を造作。左手の階段上は文庫・新書・コミックなど奥行きの浅い開架ライブラリ。右手の階段下は単行本・雑誌など奥行きの深い書籍を納める書庫。

階段ライブラリからリビング・キッチンを見る。

大容量の階段ライブラリ。背面は構造補強壁。

本棚を通り抜けて2階へ。コミック・文庫の収納には階段の蹴上げがちょうど良い高さ。

2階は個室とクローゼット。床板は吉野杉。右手の子供部屋はしばらくオープンに使い、既存引違戸を補修・反転した引分戸を嵌めて将来の分割に備える。

主寝室は畳敷。南面の窓の先には田畑が広がる。

2階天井見上げ。寄棟の複雑な架構。壁・天井を白く塗った明るい空間。

庭からの夕景。古いバルコニーを撤去し、下屋はガルバリウム鋼板で葺きなおし。縁側のある庭は子どもたちの遊び場、菜園、物干しなど暮らしの場として多目的に利用。

窓際で夕涼み。

道路からの夕景。30年間閉ざされていた廃屋に火が灯る。

概要 計画|2020-2024 所在地|奈良県橿原市 家族構成|ご夫婦+子ども2人 構造規模|木造2階 用途|一戸建ての住宅(長屋) 敷地面積|47坪[156m2] 延床面積|32坪[106m2] 施工床面積|43坪[142m2]

協働 設計監理|山本嘉寛[yyaa] 施工|[福本工務店] 庭|[塩津植物研究所] キッチン|[KANWORKS] 撮影|笹倉洋平[笹の倉舎]